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2011/12/23(金)更新
京都大学原子炉実験所助教―今中哲二さんに聞く
野田首相は16日、福島原発について「冷温停止宣言」をしたが、各方面から厳しい批判を受けている。そもそも「冷温停止」とは、通常の原子炉が安全に格納容器を開いて中の燃料棒を取り出すことができる状態を指す(京大原子炉実験所・小出裕章氏)のであり、炉心がメルトダウンしている状態の〈冷温停止〉など本来ありえない。
福島原発は、燃料棒が溶融し圧力容器を破って地上に漏れていると見られている。現在稼働している冷却システムにしても、地震安全基準に従って造られたものではない。「地震か津波が一つ来ただけで、福島第1原発はまた振り出しに戻ってしまいます」と九州大学原子力工学科工藤教授は言う。さらに、建屋の地下に溜まっている、あるいは原発の敷地内に保管されている9万トンの汚染水が太平洋に漏出する危険がある。これほどの危険を抱えた原子炉を「冷温停止」と呼べるはずがない。
野田首相の「事故収束宣言」に対し、海外メディアも不信感を隠さない。ニューヨークタイムズは、「意図的なウソと紙一重。日本政府は国民をミスリードしている」と批判するオーストリアの専門家のコメントを紹介したうえで、「現実を無視した宣言であり、原子炉の安全性への脅威から目をそらせることがねらいだ」とする専門家の見方を伝えている。
京大原子炉実験所の今中哲二助教が、11月30日、兵庫県尼崎市で「放射能汚染に対して今私たちができること」と題して講演を行った。講演後の質疑を中心に、事故の現状、放射能汚染の実態、放射能汚染とどう向き合うか?についてまとめた。(文責・編集部)
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政府が設定している500bq/sという食品基準は、放射能を測定し続けてきた私の感覚からすれば、明らかに「放射能汚染物」と言っていいレベルです。また、「基準以上の食品は流通させませんから、安心して下さい」という理屈は、「500bq/sは危険だけれども、499bq/sは大丈夫」と言っているに等しいので、明らかにおかしな説明です。
放射能による健康被害のリスクに、しきい値はありません。低線量被曝でも、被爆量に比例して影響があると考えた方が合理的です。だから、本来なら個々の食品について、成分表示や賞味期限表示のように放射能汚染のbq/sを表示すべきです。そのうえで、それぞれの人が「自分はどれ位まで我慢するか?」を決めて選んでいく他ないと思います。
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関西では、20bq/u程度のようです。ちなみに、チェルノブイリ事故の際は、日本全体が、100bq/u汚染されましたから、2割程度で少ないと言えます。
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私のように放射能を扱って賃金を得ている放射能作業従事者の限度が、年間20_SVです。例えば建設労働者が労働災害にあって健康被害を被るリスクと、同程度に設定されています。ちなみに、1SV浴びる毎に、ガンで死ぬ確率が5%上がります。したがって20_SVでの発ガンリスクは、0・1%となります。この被曝リスクを日本人全体=13000万人に当てはめると、ガンで死ぬ人が13万人増えるという計算になります。これを高いと見るか低いと見るかは、それぞれの判断です。
今さら福島原発が再爆発という事態は、よほどのドジをしない限りないと言えます。ただし、現状で最も危険なシナリオは、4号炉です。原子炉の上にある使用済み燃料プールの中に、燃料集合体が1500体くらい貯蔵されています。4号炉は、プールの下辺りで爆発が起こったので、プールの支えが破壊されています。応急工事で補強していますが、余震などで支えが破壊されて水が漏れてしまうと、たいへんなことになります。
原子炉は「冷却されている」と言われていますが、格納容器が破壊され、原子炉に注入した水がタービン建屋に流れ込み、それを回収して再度、冷却水として使うというものです。原子炉の中はどうなっているかわからないので、注入した水がどんな経路でタービン建屋に流れ込んでいるのかわからないのですが、その水がとんでもなく高い放射能で汚染されています。
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除染は、あまり効果がありません。チェルノブイリでも除染を試みましたが、効果がなかったので、中止となりました。したがって、線量の高いところは諦めて、帰れるかどうかの境界にある場所で、人が住んでいる比較的線量の低いところを除染して、住めるようにすることを優先すべきだと考えています。