人民新聞オンライン

タイトル 人民新聞ロゴ 最新版 1部150円 購読料半年間3,000円 郵便振替口座 00950-4-88555┃購読申込・問合せはこちらまで┃人民新聞社┃TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441┃Mailto:people★jimmin.com (★をアットマークに)
HOME社会原発問題反貧困編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事

2011/11/26(土)更新

就労支援の現場から@

生保は重層的困難抱える人を支える重要な道具

パーソナル・サポートと「オシテルヤ」
長居公園仲間の会 中桐康介さん

僕は、大阪府が実施する「おおさかパーソナル・サポートプロジェクト」に関連する仕事に携わっており、若年者を主な対象として、生活支援から就労支援までの幅広いニーズに対応したサポートをしています。

ジョブカフェや若者サポートステーションは、「就労の意欲がある」とみなされる人を対象とする就労支援機関ですが、パーソナル・サポートは、そうした領域を横断するものです。

例えば、就職活動以前に医療や障がい福祉を活用する必要がある人であったり、わけあって就職活動に踏み出せなかったり、職業観を持てなかったりする人も対象にします。多重債務や家庭問題など、生活領域の課題がある人も主な対象です。生活保護を受けながら仕事をしている人もいますし、家族からの虐待を経験している人、一人暮らしで社会関係から孤立している人などがいます。ほとんどは、失業や借金・DVなどの課題を、重層的に抱えています。

パーソナル・サポートは、必ずしも《安定就職》がゴールではなく、あくまでその人にとっての「安心・安全な生活」に近づけるようにサポートすることを目的にします。いうまでもなく、支援の際には、生活保護制度が重要な道具となっています。

少ない雇用と就労機会の偏りという構造

もう1つの僕のフィールドが、「オシテルヤ」というスペースでの活動です。

ここでは、長居公園に野宿 者のテント村があったころからの活動を継続していて、野宿者や失業者の相談に応えて生活保護の申請に同行したり、生活保護を利用して地域生活に移行した後も、医療や介護の相談などに応えてきました。

(以下一部全文は1431号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)

そんな時に、就労支援関連の大阪府の事業を紹介され、ノウハウを学ぶつもりで携わってきました。いま、訪問介護事業所の開設に至りましたが、さらにパーソナルサポートのノウハウを生かすことができれば、と思っています。

長居公園のテント村が強制排除で奪われ(07年2月)、野宿して生き延びることすら難しくなりました。そうしたなかで、そもそも「雇用」の絶対数が少なく、就労の機会が偏っている、という構造的問題には、オシテルヤでさらに向かい合う必要が出てくると思っています。

就労支援の現場からA

行政は「一人ひとりの生活と向き合う」基本に立ち返れ

大阪市の就労支援事業関係者田井芳実(仮名)

大阪市が実施している生活保護受給者に対する「就労支援」の最大の課題は、雇用そのものが少ないこと。これが根本問題です。求人があっても、非正規雇用で低賃金です。

大阪府の最低賃金は786円。9月末に7円上がっただけ。1日8時間、月に20日間働いても、12万5760円。せいぜい、単身者の生活保護費程度です。生保受給者は、社会保険料負担なしで医療費もかかりません。これで 「働け」と言われても、難しいと思います。

「選ばなければある」といっても、あるのは不安定で低賃金の仕事ばかり。正社員の雇用は本当に少ないです。正社員には能力と経験が求められ、いわゆる「レールに乗れた人」が対象です。生保受給者は「レールからはずれかかった人」ばかりです。身元保証人どころか、連絡先を頼む相手すらいない人もいます。

生活保護の申請から受給までには原則14日間という日数が定められていますが、申請者数が多くて1カ月近くかかる場合もあるようです。収入がない人間が、その間にどうやって就職活動をするというのか。日本はやり直しがきかない社会だと言われますが、そのとおりだと思います。

生活の安定がなければ求職活動などできませんが、まず行政の生活支援ができていません。行政と担当者(ケース ワーカー)のレベルの問題もあると思います。

生保受給者が仕事を始めても、すぐに保護廃止にはなりません。自立生活ができるまで様子見をする期間があります。このことは、受給者にほとんど理解されていないようです。働いて得た収入が全て支給額から引かれる、と思い込んでいる方もいます。全額が収入認定されるわけではなく、一定額を控除したあとの額を収入認定し、支給額は調整されます。

つまり、働いた人は、収入の一部が返納され、本人が受け取る額は増える仕組みです。ケースワーカーが説明したつもりでも、受給者には伝わっていないのです。

大阪市の本音は、生保受給者が少しでも働いて、市の財政負担を軽減してくれた方がありがたいわけですが、。行政は、肝心な部分を伝えそこねているのです。

ケースワーカー個々人は責めるのも酷な話だとも思います。ケースワーカー自身が低賃金の有期雇用職員、という例があるからです。ケースワーカー1人で受給者100人以上を担当することもある、と聞きます。これでは充 分な生活支援はできません。

ケースワーカーへの負担が高まる一方で、支援に必要な教育が不足しているようです。かつては、生活保護支給額を手計算していたと聞きます。作業は大変ですが、ノウハウは身につけられたでしょう。今はそれを補う教育がおろそかになっている、と言えます。

「生活保護からの脱却」を支援するシステム自体がおかしい

 大阪市の「就労支援事業」は、アウトソーシングされています。就労支援をしている担当者の多くが、民間業者の有期雇用で低賃金の契約社員です。就労支援する側が非正規雇用。ケースワーカーも非常勤。生活保護から脱却してもらう支援システム自体がおかしい、としか言いようがありません。

(以下一部全文は1431号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)

生活保護は、本当に大切なセーフティネットだと思います。運用次第でよいものになります。行政が、「ひとりひとりの生活と向き合う」という基本に立ち返って仕事をするべきです。


取材を振り返って

データのない政策提言の愚

生活保護に関する取材を重ねるにしたがい、解明したというより、むしろ次々と「疑問」が浮かんできた。

1点目は、生活保護受給者に対する「甘え」や「怠け者」といったバッシングについてである。自己責任論と相まった非難が、いまだに衰えぬ理由はなぜなのか。諸外国にお いて、生活保護受給者への非難やレッテル貼りが皆無ではないだろうが、データを見る限り、日本ほど厳しくないと推測される。それでは日本のバッシングの強さは何に由来しているのか。

2点目は、肝心な部分の「データ」の少なさだ。生保受給者に就労を勧めている割に、そもそも全体の生保受給者のうちの何割が現在、生活保護を受給しながら仕事しているのかというデータさえ(仮に存在していたとしても) 公にしていない。

根拠のないバッシング、データのない政策提言…思い込みや妄想で、生活保護という最後のセーフティネットへの指針を決められたらたまらない。思い込みや妄想は、現実に生きる受給者の声に耳をふさぎ、有効な政策を打ち立てず、人々を切り捨て、あるいは殺すことにつながる。人民新聞では、今後も人々のありのままの声を聞き、社会の現実に根ざした取材を続けてゆきたい。(編集部・栗田)

HOME社会原発問題反貧困編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事
人民新聞社 本社 〒552-0023 大阪市港区港晴3-3-18 2F
TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441 Mailto:people★jimmin.com (★をアットマークに)
Copyright Jimmin Shimbun. All Rights Reserved.