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2011/11/18(金)更新

宣伝効果あっても 除染効果なし

拡散させて線量を下げる政府の高圧水除染

野田政権が、除染を活発化させている。首相は、「政府が一丸となって取り組む」考えを強調。福島市で10月から始まった大規模な除染作業を視察した。

一方、内閣府から「除染実証業務」を受託した日本原子力研究開発機構は、東芝や大林組、京都大学などに除染の実証試験を再委託。除染という公共事業が、利権とともに本格化し始めた。

政府は、「2年後までに放射能50%削減」を目標と発表したが、40%は物理的減衰と自然減衰なので、除染は、10%でしかない。しかも、政府による除染は、「拡散させて線量を低下させる」というもので、鳴り物入りの除染は、効果を上げないまま、税金の無駄遣いとなる可能性が高い。

費用と労力かけず、効果的な除染方法を開発する市民除染プロジェクトの山田國廣さん(京都精華大)に、最近の成果と、除染の現状を聞いた。(文責・編集部)

「東電の除染部隊が電話1本でが駆けつけ、除去した汚染物質も引き取るべき」

剥ぎ取る除染法開発する「市民除染プロジェクト」  山田國廣さん

5月にエントロピー学会会員を中心に、除染プロジェクトを立ち上げました。4月中旬に福島市中心部にある小学校の半分以上の校庭で地表1aの空間線量が3μSV/hを越えていたのです。当時、政府も自治体も全く動きがなかったので、特に子どもたちを被曝から守るのが目的です。

除染原則は、@ 放射性物質を土壌・水・大気中に拡散させないで、剥ぎ取る、A除染された放射性物質は東京電力が引き取り、最終的に福島第1原発に戻すこと、B除染費用と被害についても東電・政府が補償する、ことなどです。

政府による除染は、原子力安全・保安院が作った基準で行われています。屋根と壁は高圧水洗浄し、土と雑草を剥ぎ取って、保管するというものです。業者もこの方法を採用していますが、道路・屋根・敷石・コンクリートに付いたセシウムは、高圧水洗浄によってはほとんど取れません。せいぜい2割程度で、それもあちこちに飛び散っているだけです。政府は、「2年後までに50%削減」を目標にしていますが、そのうち40%は物理的減衰と風雨による自然的減衰ですから、植物に移行したり、他所へ拡散することになります。しかも、除染によって生まれた汚染水は、大量の水で薄めて廃棄しろといっています。つまり、除染による削減は10%で、大半は拡散させるということでしかありません。

「除染」ではなく「移染」だといわれ始めている高圧水洗浄ですが、政府にとっては、これしか方法がないのです。除染効果はありませんが、やっているように見えますから、宣伝効果はあります。今は期待感もあって評価されているようですが、線量が下がらない実態が、そのうち明らかになるでしょう。

最近発見した優れもの「除染方法」 田畑の除染に足がかり

今回の事故による放射性物質の中心は、セシウムです。セシウムは、@水に溶けた状態、A有機物にゆるく結合した状態、B岩石成分に固く結合した状態、で存在しています。これら3種の状態のセシウムを剥がす方法をいくつか開発してきましたが、最近発見した田畑除染の方法を紹介します。

それは、プルシアンブルーで染めた布を、畑の畝の溝に敷いておくだけという方法です。雨が降ると、細かい泥が溝に流れ落ちてきます。これを受け止めるのです。安い顔料であるプルシアンブルーは、ドイツでは医薬品としても使われているもので、抜群にセシウムを吸着することがわかっています。セシウムは、30ミクロン以下の泥に付着するので、この泥を布が受け止め、水に溶けたセシウムはプルシアンブルーに吸収させるという仕組みです。

放射能汚染された田畑は面積が広大なので、労力がかかる方法は採れません。畑は畝があるので溝に敷くだけだし、田んぼも畝を立てて溝を作って、雨で自然落下したセシウム泥を集めるのです。

田んぼは、田植え前にやっている代掻き(土と水をかきまぜて土をやわらかくする)をやって泥を浮かせ、プルシアンブルーで染めた布ですくい取る方法もあります。

植物は、水に溶けたセシウムは吸収するのですが、泥に付着したセシウムは吸収しません。このため、水に溶けたセシウムはプルシアンブルーで徹底的に吸着させ、泥についたセシウムは、これらの方法で徐々に取っていけばいいのです。プルシアンブルーを使った除染は、農地には効果的なはずです。

政府が進めている「表土を剥ぐ」という方法は、田畑では事実上無理です。畝や稲株があってでこぼこなので、パワーショベルを使うと、畝ごとごっそり剥ぎ取ることになります。そうすると、膨大な放射性廃棄物が発生します。

我々が開発しているのは、できるだけ土を剥ぎ取らない除染方法です。自然の力を借りて、人力と費用を極力かけない方法です。機械も使わず、待っているだけで除染が可能なので、誰でもできる方法です。10月に飯舘村で実験を行いました。現在、結果を分析中です。

 (以下一部全文は1430号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)

10軒モデルも

セシウムは、風雨によって高い所から低い所に移動するので、森林を含めた面として除染しなければ、住宅地の放射線量も下がりません。

11月中にマニュアルの第3版ができあがり、本として出版するので、これが時期的目処です。住宅モデル、田畑モデル、町内会モデルというふうに分けて、簡潔化して提示する予定です。

今後、除染のリーダー養成・道具の開発・被曝防止訓練などの他に、除染後の放射性物質の引き取り先の確保、費用負担についての仕組みも作り上げねばなりません。

東電は除染部隊を作って、汚染物質を引き取れ!

ここで再度、「誰が責任を とるのか」を確認する必要があります。汚染者負担原則からすると、放射性物質と除染費用は、東電が負担すべきです。本来ならば、電話1本で東電の除染部隊が駆けつけて除染を行い、除去した汚染物質は東電が引き取って帰る、ここまで行うのが道理です。自主除染が東電や原発を認可 した国の責任を曖昧にするものであってはならないし、責任を明確にするための措置も検討中です。

今も子どもたちが被曝しています。内部被曝に、ここまでなら安全という「しきい値」はありません。責任の所在を明確にし、総力戦で一刻も早く除染するしかありません。

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