──「橋下教育改革」への反対活動は?
松田…2000年に「『日の丸・君が代』強制反対ホットライン大阪」(以下、ホットライン)が立ち上げられました。これは、学校での卒業式・入学式での「日の丸・君が代」の押しつけで、思想・良心の自由が侵害される事態を放っておくわけにはいかない、との思いでできたものです。
教育基本条例案 前文(一部抜粋) 第10条(保護者) |
弁護士の協力も得ながら、主には相談活動、教育委員会への申し入れを続けてきました。多くの教職員・保護者、市民が一緒になって、「日の丸・君が代」強制の問題に取り組み、なかまユニオンも参加しています。
今年6月3日、「大阪維新の会」が府議会に提出した「君が代強制条例」が可決されました。ホットラインでは、この条例撤廃と新たな処分条例制定反対を掲げた全国集会を9月24日に開きました。ところが、その全国集会の準備中に、「教育基本条例」「職員基本条例」が出されてきたのです。
この条例案を見て、「とんでもないことになる」「学校現場を知っている者が、もっと発信しなければ」と痛感しました。ホットラインをはじめ、「教育基本条例」の危険性を市民に訴える取り組みを強化しています。
──市民の反応は?
松田…橋下・維新の会は、大阪市全24区で、「区民会議」と称する公開討論会を開いています。参加者の話を聞くと、「ゆとり教育による学力低下」「学校選択制のメリット」についての話がメインだったとのことです。
私たちは、会場前で「教育基本条例案」の問題点を指摘したビラを配りました。
福島区・東淀川区では警察の妨害が激しかったのですが、参加者のビラの受け取りはよく、よく読まれていました。言いがかりをつけてくる人もいませんでした。
情宣活動を続けるうちに、維新の会もだいぶピリピリしたようです。「外でビラ配布をした者は入場させない」と24区統一で対応することを決めたそうです。「区民会議」を名乗る資格がないことを、自ら明らかにするようなものですね。
──「区民会議」の様子は?
松田…たとえば、「学校選択制」について、維新の会の議員が賛成・反対に分かれてディベートする、というものです。ただ、その中身は形式的で、最後には「選択制はいい」という結論で終わる、やらせ的な討論だったそうです。
参加者は、橋下知事に興味があって来るので、全体的には好意的な雰囲気です。しかし、10月23日の城東区・区民会議では、私たちと一緒に反対活動をされているTさんが、会場から反対発言をされたのです。
(以下一部全文は1429号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)
…
──その他、条例案に対し、どんな動きが出ていますか?
松田…大阪府教育委員からも「異議あり」の声が出ています。現在の教育委員のメンバーは、陰山英男氏ら、橋下知事自身が呼んできた人物です。その陰山氏が、9月の会議で「教員の管理を強化すれば現場がよくなるという発想は、根本から間違い」「(管理強化の規定で)学力が上がりますか、先生のやる気が上がりますか」と批判しています。また、陰山氏を含めた教育委員全員が「条例が成立したら辞める」と公言しています。
また、10月19日には、大阪府立高PTA協議会が、教育基本条例案の見直しを求める嘆願書を、橋下知事・維新の会・府議会議長に提出しています。
…
橋下知事は、「自分の意見が府民の意見」と常に強弁していますが、保護者からも、こうした疑問の声が出てきているのです。
また、維新の会の内部でも、「教育基本条例」への賛否は割れています。維新の会の大阪市議団は、9月議会に「教育基本条例」を提案しましたが、維新の会のベテラン市議がこれを批判して、「維新の会」市議団の執行部に質問状を提出して、本会議を欠席しています。
──「教育基本条例」への疑問の声は、あちこちから出ているわけですね。
松田…10月10日の「朝日新聞」に、この「教育基本条例」の素案を作成した「維新の会」の坂井良和大阪市議のインタビューが掲載されています。ここには条例の本音が出ています。
このインタビューの中で、坂井氏は、「人格形成だけでは人は生きてゆけない」「格差を生んでもよい」と発言しています。かつてのイギリス「サッチャー改革」が理想の教育モデルだそうですが、サッチャーの教育改革では、様々な弊害が噴出しました。イギリスでは、競争主義教育の是正を求める動きが大きくなっていることを、橋下知事・維新の会はわかっているのでしょうか。
…
これからも、多くの市民・保護者とともに、条例案の撤回を求める活動を広げていきます。
人民新聞社 本社 〒552-0023 大阪市港区港晴3-3-18 2F