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「労働問題としてのひきこもり」特集

安心して引きこもりできる社会なら安心して働ける

世界的に失業者が増大し、各地で暴動や抗議行動が生まれている。それにひきかえ、「日本人はおとなしすぎる」と言われるが、日本は暴動が少ないかわりに、自殺やひきこもりの増大など、違う形で怒りや哀しみの感情を表している、と考えられないだろうか。

現在「ひきこもり」と定義される人々は、160万人(NPO全国引きこもりKHJ親の会の2005年度発表)と言われており、内閣府が昨年発表した「若年無業者」数は、約82万人(2007年)である。

ひきこもりは、2000年にバスジャック事件を起こした少年がひきこもり状態であったことから、病理的ないしは犯罪心理的な観点から注目された。その場合総じて、「本人の甘え」ないし「家族の責任」が再三指摘されてきたものの、彼らを取り巻く労働状況や、彼らの力を引き出すことのできない「社会」を問う視点はあまりなかった。

今回の特集では家族よりむしろ、ひきこもり経験者と共に仕事に関わる人、ないし支援に携わる人の声を同時に取り上げることとした。これにより現在の日本社会における労働を巡る根本的な矛盾を浮き彫りにし、多様な働き方の可能性をつくりあげるためである。次号以降、「ひきこもり」当事者のインタビューを掲載する。(編集部・栗田)


インタビュー 勝山 実さん(『安心ひきこもりライフ』著者)+伊藤書佳さん(編集者)

勝山実さん(『安心ひきこもりライフ』〔太田出版 /232n/1470円/2011年7月発行〕著者)

高校3年生から不登校の後、中退。大検(現在は「高認」)取得後、3浪し、大学進学を諦める。アルバイトなどを転々。2001年、病院にかかる経緯や家族との葛藤、主張を織り込んだ「ひきこもりカレンダー」(文春ネスコ)を発行。不登校関係者やマスメディアからの注目を集めた。

10年ぶりの著書『安心ひきこもりライフ』では、障害年金の取得など、この10年間の紆余曲折が記されている。現在は「ひきこもり名人」として、安心ひきこもりライフを実践。「ひきこもりブッダ全国巡礼ツアー」と名付けられた、安心ひきこもりライフの講演&販売で日本中を行脚中。「鳴かず飛ばず働かず

「働く形」を増やしてほしい

──この10年、日本社会でも派遣村に象徴されるように、失業者が増加し、労働状況はより過酷になりましたが、勝山さん自身の生活は変化はありますか?

勝山…基本的には、あまり変わってないですね。10年前「ひきこもりカレンダー」を出版したときは、作家になれたと勘違いしてしまいました。自分の腕一本で書いたと思い込んでいたんです。でも、実際は編集者の方とか周りの人が支えてくれたわけです。当時は社会性のないひきこもりでしたから、そのありがたに気づけませんでした。

「ひきこもりブーム」が終わった2004年頃から、取材や原稿依頼はもちろん、誰からも相手にされなくなりました。その後ニートという言葉が出てきて、ひきこもりはニートが悪化したようなイメージで語られるようになりました。でも、ひきこもりを巡る社会状況は、10年前も今も、ほとんど変わっていないと思います。

──ひきこもりに対する社会の注目が薄れていく中で、2冊目の本を出したきっかけは何だったのでしょうか。

伊藤書佳さん(編集者)

『安心ひきこもりライフ』の編集者。自らも不登校を経験。子どもも不登校でひきこもり。実母もひきこもり。チェルノブイリ原発事故後に書かれた『超ウルトラ原発子ども』の著者でもある。現在、脱原発の運動に関わりつつ、ひきこもりブッダツアーでは書籍販売等もろもろの仕事に従事。

勝山…2008年に『Fonte(旧不登校新聞)』からインタビューの依頼がありました。不登校の関係者が、『Fonte』編集長の石井志昂さんに「勝山さんを知らないなんて、モグリよ」と言ったらしいんです。そのインタビューがきっかけで、『Fonte』から連載の依頼が来ました。

伊藤…私は、09年の6月頃から、『Fonte』の編集会議に参加するようになったんです。そこで、勝山さんが連載することを知りました。

もともと、1995年くらいからずっとひきこもりについての本を作りたいと思っていたのですが、なかなか「これは!」と思う書き手に出会えませんでした。

「社会に出て働くことが結局は幸せ、そこから人は逃れられない」とか、「自分で稼いで一人前」という考え方と、今の社会の現実にはギャップがありすぎます。

「ひきこもりの人を社会に出て働けるようにすることが、本人にとっても必要な支援」という主張とは違った見方で、ひきこもりについて考えたかったんです。

『Fonte』の連載と、勝山さんが書いているブログを読んで、当事者だからという意味ではなく、これほどひきこもりについて調べて深く考え続け、しかもこんなにおもしろく表現できる人は他にいない。ぜひ本を書いてほしい、と思いました。その後、石井志昂さんや『Fonte』理事のみなさんと話して、「連載をまとめて単行本を出そう」となりました。

──「仕事はできない」とおっしゃられていますが、本を書くのも仕事ですよね?

勝山…書くことは遊びに近いんです。一日30分くらいしかやらないし。僕は社会性がないので、社会性が必要な営業とかは、全部伊藤さんにやってもらっています。

伊藤…勝山さんはとても正直な人なので、つきあいやすく、締切も破らないし、打ち合わせでばっくれ(逃げる・さぼるの意)られたこともありません。私も、ムリや我慢をせずに気持ちよく仕事ができます。

実のところ、私のほうが企画書づくりや原稿への返事が遅れてしまい、勝山さんをお待たせして迷惑をかけていることもしばしばあり、勝山さんの方が社会性があるんじゃないか、と思ったりします。

勝山…私はよく「働く力のパーセンテージ」と言うのですが、「働く力」を100%持っている人は、フルタイムでバリバリと…で、だんだん50%、10%と下がって、私はほとんど持ってないのです。

──ひきこもりは、やはり正社員の男性の労働が基準となっているからこそ、労働へのプレッシャーも強まると思うんですよね。

勝山…働く形をもっといろいろ増やしていってほしいですね。「半人前」の仕事を増やせってよく言っています。1日4時間なら仕事ができる、週に3回なら、あるいは1回ならできる。そういう仕事を増やして欲しいんです。

──それはワークシェアリングと受け取ってよいですか?

勝山…そうですね。一人がものすごい残業までして働いている仕事を4時間ずつくらい3人くらいで分ける。

──そうすると、半人前から3分の1人前になりますね(笑)。

勝山…そうそう。そんな仕事の形を増やすべきですよ。

さらにいえば、そういう仕事へのコネクションを持っている人じゃなければ就労支援なんてしちゃいけない、と思います。

ひきこもりのブームも去って、どうにもならなくなって、本当に太宰の「人間失格」のような気持ちで取得した障害者手帳と障害年金でした。

この社会福祉の制度を知ることは、本当に役に立つ勉強でした。人の知らないようなことで、「これは面白い」と思った。こんな制度があるんだって、研究みたいにね。

書いてあること全部、自分のためだから、他人事じゃないでしょう。明日から使える知識が全部、そこにはある。作業所だって、自分が行こうと思って読むのでは、気持ちの入り方が違いますね。受験勉強みたいに、何の役に立つかわからない勉強と違って、これには熱中しました。

(以下一部 全文は1428号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)

社会保障の熟知こそ安心ひきこもりライフの柱

就労支援ではなく直接支援を

星の数ほどひきこもりの会を

勝山…「親」や「当事者」「研究者」などが集まる「新ひきこもりについて考える会」をやっています。にっちもさっちもいかなくなった4年ぐらい前から「ひきこもりからやり直そう」と思って、参加しています。新しい人間関係って甥っ子だけでしたからね。

10人くらいの小さな集まりがたくさんあるといいと思います。だいたい波長のあう人数の限界がそれくらいですから。そういう集まりが星の数ほどあれば、誰にでも安心ひきこもりライフの助けになると思います。

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