10月6日・米国『レイバー・ノーツ』より (翻訳/脇浜義明)
現在の危機と混乱をもたらしたのは、企業経営者や銀行や政治家である―このことに国民の注意を向けるべく、労働組合や活動家もウォール街へ入っている。
10月5日、各種労組の組合員やニューヨーク市民が、9月17日に行われた金融センターへのデモの集結地であるフォリー広場に殺到した。たちまち周囲の歩道まで、集結した人でいっぱいに溢れかえった。警官隊が金属盾で群集を規制しようとしたが、多人数に圧倒された。新聞発表では1〜2万人。
「ウォール街を占拠せよ」が初めて新聞の注目を引いたのは、警官隊に催涙スプレーで攻撃され、次いでブルックリン橋を渡ろうとした際に700人が逮捕されてからである。
「我々は99%」というメッセージが無慈悲な賃下げ、解雇、差し押さえに苦しんでいる一般民衆の心を捉え、たちまちアクションは勢いを増した。
運輸労働者組合(TWU)ニューヨーク・ローカル(支部)100(組合員3万8千人)は、真っ先にウォール街占拠を支持した組合だ。
労組の地域連帯部長マービン・ホランドは「占拠者の言う『99%』に賛同するからこそ、ウォール街占拠運動を支持する」と言った。「この混乱を引き起こしたのは銀行だという主張は100%正しい。だから占拠の初日からTWUローカル100の組合員が参加している」。
8000人のニューヨーク市従業員を組織するアーサー・チェリオテス支部長は、「ウォール街が問題の根源だと思うから」組合員が参加したと語った。
10月5日までにはニューヨーク市内労働組合運動のかなりの部分が占拠を支持するようになった。AFL―CIO(アメリカ労働総同盟・産業別組合会議)傘下の13の全国組合が支援声明を出し、それをAFL―CIO執行委員会が祝福した。
もっと進んだ組合もある。医療労働者の組合であるSEIUローカル1199は、占拠者に1週間食料を供給する決定をし、占拠する人々に救急手当てを指導するチームを送り込んだ。ローカル1199執行委員のレジーナ・グリッサムは、「組合は占拠者を分類―つまり、 若者、白人、失業者といった型にはめること―をして、労組支援を決めるやり方は行わない」と語る。
1199ローカルは有色人種が圧倒的に多い組合で、コミュニティや教会で占拠への支援体制を敷いている。妊産婦診療所の事務職員であるグリッサムは、「重要なのは皮膚の色とか組合員かどうかといった外面的なことでなく、実際に何をやっているかだ。これは労働問題だが、組合員であろうとなかろうと弾圧の対象となる。団結して大きな力にならなくてはならない」と語っている。
「占拠せよ!」運動は広がり、10数市でデモと占拠が計画されている。ボストンのバンク・オブ・アメリカ前で行った差し押さえに抗議するデモでは24人が逮捕された。ワシントン占拠も計画されている。
ニューヨーク集会参加者の横断幕、プラカード、Tシャツの文字を見ると、運輸労働者、大学教職員、通信労働者、音楽家、店員、教員、医療労働者など多様な面々だ。しかし、ほとんどの人は労組と無関係のようだった。ある人のプラカードは、「仕事を失くしたが、オキュペーションを見つけた(訳注・「オキュペーション」は、「占拠」と共に「職業」も意味する)とあった。デモ隊は「銀行は救済されたが、俺たちは売り渡された」と合唱した。これは、2008年にシカゴでレパブリック・ウィンドウズ&ドアズ社で工場占拠をした労働者が歌った歌詞である。「国の赤字解消だって?戦争をやめて、金持ちに課税すればよいのだ!」
鮮やかな横断幕を掲げて、親といっしょにデモをやっている中学生もいた。彼らは「芸術の先生を返せ」と解雇された教員の職場復帰を市当局に求めていた。ニューヨーク市立大学教職員は大隊列を形成して「PSC(ピア・サポート・コミュニティ)は君たちを支援する」という横断幕を掲げていた。
通信事業労働者は、デモをしながら、「ベライゾン社が公正契約問題を解決するまでiPhoneをアップグレードするな」と書いたビラを通行人に渡していた。彼らは、先週ベライゾン本社前のピケに占拠者たちが支援に加わってくれたので、このデモに参加したと言っていた。
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州の富豪への減税は、今年末に実施される予定なので、州知事の金持ちへのプレゼントを思いとどまらせる時間は組合や占拠者にある。
連合はさらに米国雇用法や、高額所得者の税率を1990年代水準にまであげるバフェット・ルール(訳注・投資家で慈善家の富豪ウォーレン・バフェットが富豪の税率が低いことを批判したことをオバマが引用して、金持ち課税率の引き上げを提唱ときに使った言葉)など公正分担税法を成立させることを議会に求めている。
占拠者のインスピレーション、創造性、機知が労働組合の戦略的影響力とが結びつけば、かなり強力な社会的力となる可能性はある。主流メディア各社はウォール街占拠現象を奇怪な祭り騒ぎに仕立て上げようとしているが、占拠者たちは自分たちが発信するメッセージには普遍性があって、多くの人々から受け入れられていると言っている。「人間よりも利益を、正義よりも私欲を、平等よりも抑圧を優先する企業が政府を動かしているときに、我々は皆さんに訴えるためにやってきた」9月29日に集結した人々が議決した声明だ。「世界を支配する企業勢力から不当な扱いを受けたと思う人々全てが、味方であると知ってもらうために声明を書いた」
メディアが抗議者の要求が不明瞭だと批判したことに対し、ある女性抗議者は、「あなたは要求が欲しいの? 私たちは未来が欲しいのです!」という看板を出した。
(以下略).
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