2010年7・8月号 『マンスリー・レビュー』
マルタ・ハルネッカー(チリの社会学者、ジャーナリスト、活動家女性) /翻訳・脇浜義明
代表制民主主義の出発点が、地域社会、職場、学校などの自治組織であることは、了解されただろう。しかし、自治システムを出発点のみ、小さな草の根レベルだけに限定させてはいけない。多数の草の根レベルの必要・要求や関心を調和・結合させて、社会全体の公共課題として処理・解決するシステムを開発しなければならない。底辺の草の根レベルの自治を、国全体に拡大しなければならない。広い国家全体となると、何らかの形の代表制か派遣制を避けることはできない。
我々は、代表制を丸ごと否定するものではない。ブルジョア民主主義選挙の代表システムを否定しているのだ。本当に代表という意味で機能していないから、否定するのだ。
だから、労働者階級や一般住民の関心や利益を本当に表現する民主主義的代表が生まれるように、ブルジョア民主主義制度とは異なるシステムを作り出さなくてはならない。しかし、ブルジョア社会では「代表」が私物化する。地域社会や職場から選出された「代表」または「被派遣者」または「スポークスパーソン」は、現場の意思決定を伝える過程を社会化し、代表たちが労働者や住民に完全責任を負わねばならない。ブルジョア代表制に代わる、そうした「派遣システム」または「スポークスパーソン・システム」(以下、新システム)を開発しなければならない。
新システムは、単なる政治的代表制度でもなければ、単なる選挙制度でもない。4〜5年に一度、有権者が投票し、その後選ばれた代表から何の連絡も接触もないという「5分間民主主義」ではない。新システムの目的は、組織された人民(エリートでなく、大多数の民衆)が選挙後も主権を維持し、代表に委譲するのでなく、公的問題処理に関与できることを保証することにある。
新システムは、国家システムのあらゆるレベルで人民が主権を行使できるようにする仕組みである。これはパリ・コミューンのときに生まれて、実際に古典的な代表制政治を乗り越えた経験がある。
ベネズエラでは、ブルジョア代表制民主主義を批判する中で、「スポークスパーソン」という言葉を導入した。ブルジョア民主主義では、選挙のときだけ「代表」顔し、選挙後は中央の官僚機構でぬくぬくとする「代表」という用語に代え、地域社会評議会に選ばれた者たちを「スポークスパーソン」と呼ぶようにした(スペイン語では、「ボセロ」〔男〕「ボセラ」〔女〕という。これは「声」を意味する「ボス」という単語の派生語)。だから、地域や職場の声を伝えなくなったスポークスパーソンは、すぐにリコールされる仕組みになっている。
新システムの狙いは、政治的代表の法的権力を廃し、草の根の投票者とすべてのレベルの意思決定過程とを直結させることにある。
(以下一部.全文は1424号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)
*職場または地域で選ばれた被派遣者
*草の根と直結
*選挙民の権利譲渡はない
*職業的政治家ではない
*白紙委任はない
*絶対的拘束はない…被派遣者が出身組織の意思を反映するのは当然であるが、それは必ずしも「絶対的命令」に縛られているということではない。被派遣者は、メッセージを伝達するだけのロボットではない。責任をもつ創造的人間であり、彼を選んだ人々と同じように主権者である。彼はあらゆる分野で積極的創造的に活動し、住民の意思をどのように実現するかを考え、他の被派遣者と交流して見識を広め、それを地元の人々に伝えて共同学習する。
*事前に決めていない態度決定
*意思決定過程以外の責務
*リコール
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