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あくまでも楽観主義で「いいことも悪いことも受け入れる」

二本松で循環型農業を実践する農水省元官僚

ななくさ農園/有機農業(二本松市)関 元弘(40歳)


東京生まれで農林水産省官僚だった関元弘さんが、二本松に新規就農したのは5年前。中央と地方の人事交流で旧東和町役場に2年間赴任したのが縁だ。いったん本省に戻ったが、「人と環境に優しい生活と農業を実践したい」と、定住を決意した。

しかし、そんな「理屈」だけで転職などできるものではない。当時から地域のリーダーであった大野さん(現NPO法人ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会理事長)の人柄、生き方に触れたことが、転換の力となった。「畑だけじゃなく、周囲の森林も含めて考えると、農業はおもしろい」と説く大野さんの農法は、里山を生かした循環が見事に成立していた。自ら販売先も開拓する大野達弘さんの周りには、自然と人が集まってくるという。

耕作放棄地の開墾から始めた関さんだが、今も農業だけでは収入が少ない。その分、農閑期の冬場は近くの酒蔵で酒造りをし、連れ合いの奈央子さんは英語教室を開き、それぞれ好きな仕事で収入を得ている。

大規模化・集約化を進める農水省官僚が、中山間地農業にどんな夢を描いたのか?その夢は、原発事故でどんな変化を強いられたのか?関さんの自宅におじゃまして話を聞いた。(編集部・山田)

──農水省の方針とは、全く違う実践をしているが、矛盾はないのか?

▲「食品の安全性も、総合的に観る
視点が大切」と語る関 元弘さん

…限られた農水省予算のなかで成果を上げようとすると、中核農家を支援するという政策は、やむを得ません。私は、農業工学が専門で、大規模化で機械化・効率化を進め、国際市場で競争できる農業を学んできました。しかし、エネルギー価格・人件費が高い日本は、そもそも大きなハンディを負っています。農水省モデルが可能なのは、北海道など一部地域に限られます。国土の7割を占める中山間地で、大規模化・集約化は現実的ではありません。

私たちは、持続可能性や環境への問題意識が強い世代です。元々農業に興味があったので、農水省に入りましたが、大規模化・機械化の農業は、エネルギー大量消費型で、「違うなぁ」と思っていたわけです。

ところが、大野さんたちが二本松でやっていた農業を見ると、持続可能な循環型です。「畑だけを見るのではなく、山も含めて農業を考えると、循環が見えてきて、おもしろくなる」と語る大野さんの言葉は、魅力的で説得力がありました。

大野さんは、米・野菜を作り、冬場は里山に入り、原木を切り出して、椎茸を栽培します。農業・山仕事、何でもこなす姿は、まさに「百姓」そのものでした。私も妻も非農家出身で、都会育ちだったので、大野さんたちの自然を生かした農法に余計に惹かれたんでしょう(笑)。

──新規就農は大変だと聞くが…。

…荒れた桑畑の開墾から始めました。大野さんのご尽力で家も見つかり、「開墾もみんなでやった方がいい」と声をかけてくれたので、10数人の助っ人を得て、20年間耕作放棄していた桑畑が、見事な畑に変わりました。

就農5年目ですが、今も農業だけでは収入が少ないです。冬場は趣味と実益を兼ねて、酒屋で酒造りのアルバイトをし、妻は英語教室を開いて、それぞれ楽しみながら家計の足しにしています。もともと「半分農業でいい」と思っていたし、中山間地で専業は難しいので、いくつかの稼ぎを持ちながら、生計を立てるというスタイルの方が、おもしろいのです。「あれが駄目なら、これで行こう」という、百姓の知恵です。

──放射能の影響は?

…今は、放射能ばかりが恐れられていますが、農薬・食品添加物など、健康被害をもたらす要素は、身の回りに溢れています。食品の安全性も、総合的に観る視点が大切です。

その上で放射能の影響を考える時、土が汚染されているのは間違いありませんが、農産物にどれほど吸収されるか?は、はっきりしていません。実際の作物がどれほどの放射線を発しているかを測定し、公開された生情報を判断し、選択して欲しいと思います。

この数カ月間、放射能の危険性ばかりが議論され続けたので、正直言って、鈍感になっているのかもわかりません。もう一度、放射能の影響について、客観的、総合的に見直す時期でしょう。

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インタビューを終えて

関さんは、拍子抜けするほど楽観的だ。8ヵ月になる娘を抱きながら、会議に参加し、インタビューに答える。夫妻の実家からは、「大丈夫か?」「早く避難しろ」と頻繁に電話がかかる。「ご縁があってここに来たので、いいことも悪いことも受け入れるしかない」と笑う。

自宅近辺の空間線量は、爆発直後は5μSVだったが、だんだん下がって、現在は1・0μSVたらず。でも農民は屋外作業が多く、土にも触れるので、被曝量は多いはずだ。線量バッチを付けて測り、年間被曝量を計算したら、5_ほどだったという。「もう開き直った」という。

最近、醸造所の免許も取った。自家製麦芽を使って地ビールを作るために、研究中だ。あくまで前向き。「チョー」が付く楽観主義だ。

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