怒りの『東電・原発おっかけマップ』
原子力村関係者の住所のみならず自宅地図・写真まで掲載した本が出版された。その名も『東電・原発おっかけマップ』。ところが、この本、流通ルートから排除され、配本されなかった。日販・トーハンなど大手の出版物流通・取次が配本を拒否、インターネット通販大手・アマゾンも取り扱いを拒否するという「言論封殺」の憂き目にあってしまったのである。
「個人の住所・地図を晒すのは、プライバシーの侵害、やりすぎだ」という声も聞かれる。過激?スキャンダラス?果たしてこの『東電・原発おっかけマップ』は、どんな内容なのか?どんな想いでこの本を世に出したのか?本書出版にあたり、特別取材班を指揮した鹿砦社代表・松岡利康さんに話を聞いた。(編集部一ノ瀬)
──本書出版の動機は?
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松岡…怒り以外の何ものでもありません。「福島の方々の怒りと悲しみ、これをぶつけるような本を作ろう」「原発を推進してきた連中への責任追及をキッチリとやろう」との思いが原点です。
あれだけの原発事故が起こり、沢山の人たちが故郷を追われ、仕事を失い、地域の産業そのものが崩壊させられてしまった。立ち入り禁止となった20q圏内では、遺体捜索すらできません。
一方、東電役員をはじめとする原子力村の連中は、誰一人として責任をとっていません。情報は公開しないし、会見では「大丈夫です」「影響はありません」としか言わない。こういう時に批判するべきマスコミも、原発翼賛体制擁護の片棒を担いでいる有り様です。
「福島原発事故は、21世紀のジェノサイドだ!」─『東電・原発おっかけマップ』は、言論・出版に携わる者としての、私なりの怒りの表現です。「鹿砦社は初志を忘れ、芸能本ばかりで社会問題の本は出さなくなった」と誤解している方も多いようですが、ここぞというときはやりますよ。
──「原子力村」関係者の経歴や、原発推進にどんな役割を果たしてきたか詳細に調べ上げていますが、住所・地図を載せていることばかりが話題になっていますね。
松岡…この本を「過激だ」「プライバシーの侵害だ」という人もいるようです。私自身は、1997年に出した『厚生省おっかけマップ』の方が、より「過激」です。この本は、薬害エイズや製薬行政について真正面から批判していますし、官僚・御用学者や政治家の行きつけの料亭にいたるまで掲載してました。
原子力村の連中は、原発翼賛体制の恩恵で手にした「不浄のカネ」で豪邸を建て、のうのうと暮らしています。見えない放射能被害におびえ、不便な避難所生活を強いられる福島の人々は、プライバシーどころではないにもかかわらず、です。
彼らの住所や自宅の地図を公開しましたが、これを読んだ読者が「こんな豪邸に住んでるのか!」と怒りを燃やすのもよし、抗議の手紙を書いてもいいし、彼らの自宅を「反原発デモ」のコースに入れるのもいい。どんどんアクションを起こして欲しい。
原子力村の連中の責任を徹底追及するにあたっては、キレイ事を言っていても仕方がない。中途半端なことをやっても、連中にとっては痛くもかゆくもないんです。彼らは一介の市民ではありません。公人中の公人ですし、原発事故のA級戦犯です。
先の戦争では、A級戦犯は処刑台に送られましたが、今回の原発事故の戦犯らも、たとえ処刑台ではなくとも、同等の罪をあがなってもらわなければなりません。少なくとも全資産を投げ出すぐらいの 良心 のひとかけら位あって欲しいものです。いろんな表現形式、いろんなやり方があって当然と思いますが、最近のデモはおとなしすぎます。権力者に生の怒りを示し、連中をドキっとさせるような「過激」なデモや抗議行動があってもいいんじゃないでしょうか。
──出版への圧力などは?
松岡…何もありません。取材中も、本の出版後も、抗議電話ひとつありませんでした。
──「原発」に関して、どんな思いを持っていますか?
松岡…高木仁三郎さんのことを思い出します。高木さんは核化学の専門家として、2000年に亡くなるまで、「原発の持続不可能性」「プルトニウムの危険性」などについて、精力的に発言を続けてこられました。
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