7月31日(土)、イスラエル全土で、過去最大15万人規模のデモンストレーションが行われた。
きっかけは、ひとりのユダヤ系イスラエル人の呼びかけだった。その呼びかけは、瞬く間に「テント村」運動として全国に拡大。当初は住宅問題に限った要求だったが、子育て、医療、教育、そして物価抑制、労働条件など、あらゆる社会問題へと拡大した。
「ネタニヤフ退陣」を求める声も日増しに強まり、現在ではイスラエルの政治状況を揺るがすまでに運動は高まっている。パレスティナ問題解決に向けた動きは生まれるのか?イスラエルのテント村運動を追った。(阪口浩一)
不動産バブルに湧くイスラエルでは、過去5年間でテルアビブ市内に限っても、住宅価格が平均65%、昨年1年間だけで31%上昇している。今では平均サイズの1000平方フィート(約93u)の家賃は月2〜3000jで、これは大半のイスラエル人の月収を超える。テルアビブの若者は、生活のために仕事のかけ持ち、複数でアパートをシェアーしたり、仕事がありながら親の援助を受けざるを得なかったり、の生活を強いられている。
リーフさんは、家賃高騰に抗議するために、テルアビブ中心街でテントを建てることを決めた。フェイスブックに計画を書き込み、同様に家賃に悩む人々に向けて参加を呼びかけた。わずか2週間前のことだ。
呼びかけに賛同した20人と共に、テルアビブ市の高級住宅街であるロスチャイルド大通り、イスラエル国立劇場の向かい側にテントを設営。その翌日にはテント数は50となり、週末には100を数えた。
その頃から「テント村」はテルアビブ市内からイスラエル各地へと飛び火し、テレビの夕方のニュース番組で取り上げられ、一般紙の一面を飾るまでに拡大した。
リーフさんが呼びかけた7月23日の住宅抗議デモには、テルアビブ市内だけで3万人が参加。同28日には、現状では3歳から無料の保育施設を生後3カ月から適用するよう求める母親グループが、「ベビーカー・デモ」を市の中心部ジョージ通りで開催。その頃には、テント村運動の要求は、子供の養育、教育、医療、賃上げ、物価抑制とあらゆる社会問題へと拡大し、「ネタニヤフ退陣」を求める声も目立ち始めた。
運動の中心は、中産階級の学生を中心とした若者たちだ。とはいえ、教員、ヒッピー、アナーキスト、環境保護活動家、労働者、医者など、多種多様な人々が参加し、世代を越えた支援が拡大している。最新の「ハーレツ」紙の調査では、テント村運動への支持率は87%に達している。
当初は寛大なコメントを出していたイスラル政府も、この事態を受けて、方向を転換。7月末にポーランド訪問を予定していたネタニヤフ首相も渡航を中止し、「@今後1年半で5万戸、うち1万戸を学生用として公営住宅を建造する、A学生に交通費を補助する」と公約したが、国民の要求は、もはや収まりはしない。
「マーリブ」紙の報道によると、7月31日には、イスラエル建国以来最大規模の抗議行動となる15万人が、イスラエル各地の抗議デモに参加した。「アルジャジーラ」英語版のベン・ピーベン氏によると、「ビビは帰れ」(「ビビ」はネタニヤフの通称)の声が、前回23日のデモより拡大し、そこで頻繁に使われたスローガン=「私たちは社会的な正義を要求する」は、「アラブの春」を彷彿させたという。
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