マルシア・フランガギス
『カウンターパンチ』(アメリカの隔週刊ニュースレター)より
翻訳/脇浜義明
ギリシャ危機は、「ヨーロッパ単一通貨にどれだけ回復力があるか」を試す初めてのテスト・ケースといえる。銀行危機の後には国家負債が急増する、というのが歴史的に繰り返されてきた事実である。これは、国家が銀行部門に財政支援を行い、不況のためにGDPが低下することから生じる。ギリシャには他のEU加盟国のような規模の銀行危機はなかったが、財政が、グローバル危機による不況の大打撃を受けた。これが、ギリシャ特有の税徴収機構の弱さと近年の支出増大(軍事費、オリンビック開催費などと相埃って、財政赤字と公的債務の急増を招いた。
メディア報道とは異なり、ギリシャの労働者はドイツの労働者よりも長時間働く(2009年の労働時間は一人当たり平均216↓時間で、ドイツの1382時間よりけるかに長い)。そのうえ、ユーロ導入後の10年間でギリシャの1時間当たりの労働生産性は、ドイツの2倍以上の上昇を見せた(ギリシャが26・3%、ドイツ11・6%)。
問題は、ギリシャの賃金と物価の上昇率がドイツよりも高かったので、ドイツに比べてギリシャの競争力か弱くなったことだ。いわゆるEUの「貿易不均衡」の根底にあるのは、これである。ドイツのように他のEU諸国、とりわけ南の国々より賃金上昇を抑えた国があるからであった。ドイツはこの方法によって貿易黒字を蓄積、そのことは南の国々、例えばイタリア、ギリシャ、スペイン、ボルトガルの貿易赤字に反映されている。
…
最初の「援助&緊縮財政」パッケージが実施されてから1年後、ギリシャ社会の大衆層の所得と生活水準が劇的に低下し、しかも改善の見込みがまったく見えなかった。大打撃を受けたのは、ギリシャ経済の屋台骨である小企業と、年金生活者や若者であった。若者は、国を捨てて大量に外国へ移民している。そういう状況だから、ギリシャ国民が債激し、国民から真実を隠し、ギリシャ経済が抱える問題とギリシャ社会の未来のために懸命に取り組もうとしない2与党連立政府に怒りをぶつけるのは、当然である。
このいわゆる「ギリシャ危機」に対するEUの取り扱が、危機を更に酷くしている。
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