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▲エジプト・タハリール広場にて
更新日:2011/06/08(水)

[情報] 広がる民主化デモ ポスト9・11革命
──ジャクリーン・オルーク(Z space)

「テロとの戦争」というレトリック

「アラブ」革命として包括されているものが始まってほぼ2カ月経過した今、国際社会はムスリム社会に対するイメージの修正に四苦八苦している。

チュニジアとエジプトの反乱は、新世代ムスリム(イスラム教徒)の社会的コミュニケーション能力の豊富さを証明した。

彼らは、歴史から教訓を学び取って、新たな抗議の表明法を開発したのである。彼らのおかげで、英米メディアはこの革命に「イスラム主義」というレッテルを貼ることができなかった。

彼らは、「テロとの戦争」というレトリックの中で育った世代だ。「悪い」ムスリムは9・11に責任があり、「良い」ムスリムはその汚名を晴らすために懸命になっている人々、とされている。そして「良い」ムスリムが自由主義、近代化、イスラムと近代西洋との両立と結びつくものとされていることを知っている。

さらに彼らは、ネオコンからリベラルや左翼にいたるまで様々な社会的プレイヤーが、イスラムをご都合主義的にいろいろなタイプに分類しているのも知っている―進歩派、穏健派、原理主義者、新原理主義者、聖戦派などと。彼らは、ムスリムであること自体が問題のある政治的立場と見られる世界で暮らしてきたのだ。

世俗的言語によるムスリム革命

若者運動が使ったコミュニケーション戦略は、世俗的政治理念を宗教的言語で表現するのではなく、ムスリム大衆による革命を世俗的言語で表現した。蜂起を聖戦(ジハード)ではなく「革命」と提示することで、神政国家を求めているわけではないことを示した。彼らの新コミュニケーション計画は、過去10年間、西側世界主流派が作り上げてきた枠組みに対する対抗的世界観を創造することであった。

これは、9・11後の世界を論じたトマス・フリードマンの『経度と態度―テロ時代の世界』に典型的だ。

「…テロリストはボーイング機をハイジャックできるが、彼らのしおれた画一的社会ではボーイング機を生産できない。テロリストは米国製インターネットを利用できるが、彼らの唯一神、唯一真、唯一方法、唯一指導者の窒息した世界ではそれを発明できない」。

しかし9・11以降、かなり年月が経った現在、フリードマンはソーシャル・ネットワークを使って革命を鼓舞したアラブ若者の、飽くことを知らない精神を褒めている。

『ニューヨーク・タイムズ』の署名入り記事の中で彼は、「若者にとって大きな仕事は責任感、近代化、イスラム改革、異文化対話に基づく新しい世界観の構築だ」と論じ、「イランやイラクでの民主化自治運動が成功すれば、その課題は実現できる」と結論づけている。これは、米国とイスラエルの権益にとって好都合であるのは、言うまでもない。

西側リベラルと同様、世界の左翼も、若者の「アラブ」革命の世俗的伝達法を喜び、それが世界の左翼を元気づけるために活用できると思った。例えばハートとネグリは『ガーディアン』に書いた論文で、アラブ若者世代の「ラテンアメリカ的闘争」となる期待を表明している。「この革命は、ネオリベラリズムを通過させない関所で、資本主義も不審人物として足止めする。経済による支配というグローバル・システムをも問題にしている革命だ」と、彼らは論じている。

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