[コラム] 小出裕章/原子力は即刻やめても困らない
原発にサヨナラするのに何の犠牲もいらない
原発震災から身を守る一番有効な対策は、原発自身を廃絶することです。日本では現在、電力の約30%が原子力で供給されています。そのため、ほとんどの日本人は、原子力を廃止すれば、電力不足になると思っています。また、ほとんどの人は、今後も必要悪として、受け入れざるを得ないと思っています。そして、原子力利用に反対すると、「それなら電気を使うな」と言われたりします。
しかし、発電所の設備の能力で見ると、原子力は全体の18%しかありません。その原子力が発電量では28%になっているのは、原子力発電所の稼働率だけを上げ、火力発電所のほとんどを停止させているからです。
《原子力発電が生み出した》という電力を、すべて火力発電でまかなったとしても、なお火力発電所の設備利用率は、7割にしかなりません。それほど日本では発電所は余ってしまっていて、年間の平均設備利用率は、5割にもならないのです。
つまり、発電所の半分以上を停止させねばならないほど余っているわけです。
ただ、電気は貯めておけないので、一番たくさん使う時にあわせて発電設備を準備しておく必要がある、だからやはり原子力は必要だ、と国や電力会社は言います。
しかし、過去の実績を調べてみれば、最大電力需要量が火力と水力発電の合計以上になったことすら、ほとんどありません。電力会社は、水力は渇水の場合には使えないとか、定期検査で使えない発電所があるなどと言って、原子力発電所を廃止すれば、ピーク時の電気供給が不足すると主張します。
しかし、極端な電力使用のピークが生じるのは、一年のうち真夏の数日、そのまた数時間のことでしかありません。かりにその時にわずかの不足が生じるというのであれば、自家発電からの融通、工場の操業時間の調整、そしてクーラーの温度設定の調整などで、充分乗り越えられます。今なら、私たちは何の苦痛も伴わずに原子力から足を洗うことができます。