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更新日:2011/06/01(水)

[社会] 原発をかばう大本営メディア
──ジャーナリスト/同志社大学社会学部教授・浅野健一

福島原発「事件」は権力・東電による人災だ

「東京で大地震が発生し、羽田空港のチェックをしているので、出発が遅れる」─3月11日午後、東日本大地震が起きた時、私は北京空港にいた。中国のテレビは、津波に飲まれる三陸海岸の町の悲惨なシーンを放送していた。

午後9時ごろ羽田に着いたが、交通機関はストップし、一晩ロビーで過ごした。結局、千葉県の自宅へたどり着いたのは、12日午後4時過ぎだった。

家に帰って、東京電力福島第一原発で炉心の空焚き、燃料溶融、使用済み核燃料プールの水位低下などが起きていると知った。

その後、原子炉建屋での水素爆発、放射性物質の大量放出などが相次ぎ、6基の各原子炉が制御不能に陥った。私の住む千葉県では、「計画停電」(おかしな言葉だ)に振り回され、ガソリンスタンドに長い列ができ、コメや牛乳が店から消えた。

権力と東電は、「原発がなければ電気がなくなる」と恫喝して、脱原発の世論が生まれないように画策している。また、自衛隊、米軍の活動を美化している。彼らはどんな時にも、権力強化を狙う。

地震と津波の被害は自然災害だが、原発「事件」は権力・企業犯罪だ。海外で致命的な事故が起きても、「日本の原発は技術が優秀で安全だ」と断言し、内外で原発を売ってきた。菅首相は、彼の政権の成果の一つとして、ベトナムとの原発契約を挙げていた。

メディアと学者の子守歌

メディアは、脱原発につながるような情報を一切報じない。原発事件に関する取材と報道は、アジア太平洋戦争時の「大本営発表報道」に匹敵する。原発事件に関するメディアの取材報道は、戦後ジャーナリズム史上最悪だ。記者クラブメディアの悪いところが全部出た。

米国に住む、元同志社大学教授のフィリップ・カニンガム氏は、「NHKは本当のことを伝えているのだろうか」とメールで聞いてきた。

3月18日の朝日新聞1面の見出しは、「原発肉薄30トン放水」「自衛隊車両、連続作業も」だった。中国侵略を伝えた「誉れの肉弾三勇士」記事のようだ。

原発のことは、海外のメディアが客観的だ。ニューヨークタイムズは14日朝、「福島原発で『部分的なメルトダウン』が始まり、日本は崩壊の危機にある」と言い切っている。

米国防総省は16日、福島原発からの放射能被ばくを避けるため、少なくとも80q圏から避難するよう、軍関係者に命じた。 これとは別に、ホワイトハウスは16日、原発から80q圏内の米国人に避難するよう勧告した。

17日の朝日夕刊3面は、米国の80q圏避難勧告について大きく取り上げた。記事には、米原子力規制委員会のヤズコ委員長が、米議会で行なった「4号機の使用済み燃料プールから、ほぼ水がなくなった」との証言を報じた。米政府の避難勧告は、これに基づいて出されている。

ところが朝日の記事では、この証言の部分はベタ記事で、枝野官房長官の事実上の否認発言と並列して、書かれている。識者2人のコメントは、《米国の言っていることは聞き流しておけばいい》といった調子だ。

政府と東電を監視すべきメディアは、「津波が想定外だった」とか、「国難だから国民一致で乗り越えよう」と、責任の追及を抜きにして、問題をすり替えている。テレビに出る東大などの教授のほとんどが、原子力発電を推進してきた御用学者だ。原発「事件」は人災だ。NHK・民放とも、東電と政府に甘すぎる。危機的状況なのに、根拠もなしに、「何とかなる」と言うばかりだ。

放射性物質の環境放出について、メディアは当初から「人体に影響はない」の大合唱で、きちんと伝えるメディアは、ほとんどない。原子力資料情報室、たんぽぽ舎、レイバーネット、広河隆一、広瀬隆両氏のブログなどの情報と、政府・記者クラブメディア報道は、全く違う。

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