[情報] 獄中での政治参加を保証せよ
──釜ヶ崎地域合同労組委員長 稲垣浩
受刑者にも選挙権を!
滋賀刑務所の前には道路があり、今年7月11日に執行された参議院議員選挙に立候補した候補者の選挙カーのスピーカーが、候補者の名前と投票を呼びかけていました。免業日(懲役のない日、土・日曜日等)は私の居る独居房ではよく聞こえました。
官から回覧される新聞には「棄権せず投票に行きましょう」と書かれ、また房内のスピーカーから流されるNHKのニュースや、房内に備え付けられたテレビ(夜7時から視聴できます)でも、NHKのニュースは選挙戦が始まると選挙関連ニュースや党首等の動向を放映していました。
私は滋賀刑務所で懲役刑に服していましたが、「選挙はできるもの」と思っていました。刑務所の待遇改善等に積極的に取り組んでいる党の候補者に投票しようと決めていました。私が住民登録をしている大阪市西成区の釜ヶ崎解放会館に投票の案内状が届くか、あるいは私の居る滋賀刑務所に届くか、期待をして待っていました。しかし分かったことは、《選挙人名簿には載っているが、投票はできない》ということでした。
私は懲役刑の判決を受け、納得はしていないものの刑に服し、刑務所から指示された所定の作業を拒否することなく行ってきました。刑務所での私の義務は、これだけではないでしょうか。
私(受刑者)の権利はどう行使できるのでしょうか。公民権を剥奪され、この国の行く末を決める国政選挙に受刑者が参加できないということは、閉鎖的な塀の中でもがき苦しむ受刑者の状況が改善されずに続いてゆくことであり、受刑者の憲法に保障された人権が踏みにじられる状況が永遠に続くことになりはしないでしょうか。受刑者が政治に参加することは、受刑者の人権が守られることと同時に、待遇の改善が図られることにつながるのではないでしょうか。
刑務所の中に政治の風が吹き抜けてゆくことは、受刑者にとって希望の光となることでしょう。私は今から30年ほど前に、大阪市議選に初めて立候補しました。それまでは選挙カーはおろか、投票を呼びかける選挙管理委員会の宣伝カーすら来なかった釜ヶ崎に、今では選挙のたびに選挙カーが地区内を走り、地区内の小学校では候補者の演説会が行われ、候補者が地区内を歩くようにもなりました。
政党が見向きもしなかった釜ヶ崎に政治の風が吹くようになり、日雇労働者の人々が釜ヶ崎に住民登録をして投票行動に参加することにつながっていったのです。日雇労働者の声が政治に反映されることを願って。
刑務所においても、受刑者の声が政治に反映されることは、社会にとって重要なことではないでしょうか。刑務所の中で候補者の演説会が行われることになれば、そのときこそ日本国憲法で保障された法の下の平等が日本に確立されたと言えましょう。