[海外] パレスチナ/種子にたくす共生への足がかり
──2010年11月22日付「電子インティファーダ」ラミ・アルメガーリ
種子の再生産プロジェクトを支援する農村女性発展協会(RWDS)
11月22日の真昼時だった。61歳のハムダン・アブ・シャルーフは、自宅の庭畑で腰を屈めて、懸命に働いていた。ガザ回廊南部ラファ市キルベト・アル・アダス村にあるアブ・シャルーフのオクラ畑には、特別な意味があった。
「この小規模なオクラと野菜の栽培は、今は亡き妻のウンム・アブダラが、農村女性発展協会(RWDS)キルベト・アル・アダス支部の協力で始めたものだ」と、アブ・シャルーフは言った。
RWDSはNGOで、占領西岸地区とガザ回廊の各地に支部がある。「これは種子の再生産プロジェクトです」と、彼は花の種を一掴み手のひらの上で見せて説明した。妻の名を口にした時、彼の目から涙がこぼれた。妻はこの夏に亡くなったばかりだった。
アブ・シャルーフの小畑は、モロヘイヤなどの作物で青々としていた。モロヘイヤというのは、パレスチナや周辺の国々で人気がある青野菜で、バジルと同じようにシチューやスープに使われる。
彼は、息子たちと一緒にこの畑で働き、生産した作物や乾燥種子をRWDSの地元支部に売って、生活費を得ている。「モロヘイヤで家族を養い、残った作物を乾燥させてRWDSに買ってもらう。おかげさんでこのシーズンは1000シェケル(=約300ドル)も稼げたよ」。
同じキルベト・アル・アダス村の一角、アブ・シャルーフの畑から少し離れたところに、55歳の女性ウンム・ジヤードの庭畑がある。250平方メートルほどの畑で、やはりRWDSの地元支部の援助を受けている。「うちのは胡椒とパセリの畑です」とウンム・ジヤードが説明した。彼女は娘と2人で労働している。「以前は市場へ行って野菜を買っていたけれど、このプロジェクトに参加してからは、肉の買い物以外に、市場へ行く必要がなくなりました」。
広がる農家の自給自足
アブ・シャルーフとウンム・ジヤードは、RWDSがこの1月から日本の資金援助で開始した種子再生産プロジェクト(訳注…RWDSは、PADC〔パレスチナ農業開発協会〕と共同で「種子バンク」という農業支援事業を開始した)の恩恵を受けた農民の1人である。
種子を乾燥させているアルミニウムの棚の前で、ウンム・ジヤードは、種子乾燥装置は2つあって、自分のところにあるのはその1台で、10人の農民で共同使用している、と説明した。
彼女はさらに、種子再生産プロジェクトの中で、家畜の糞や堆肥などからの有機物肥料の作り方の研修も受けたという。ハムダン・アブ・シャリーフの今は亡き妻=ウンム・アブダラが有機農法で栽培した乾燥種子をRWDSへ持っていき、RWDSがそれをプロジェクト化することを思いついたのである。
RWDSのアハラム・アル・シャエル委員長は、プロジェクトについて次のように語った。
「私たちは、プロジェクト案を日本の『パレスチナ子どものキャンペーン』と、ガザ農業救援ユニオンへ持って行きました。キャンペーンが協力に同意してくれたので、私たちは農民10人を選んで、実行に移りました」。
彼女の説明によると、プロジェクトは順調に収益を産み、一台5000ドルもかけて購入した乾燥機2台などの初期投下費用の一部は、すでに回収できた。