[海外] 福島原発事故─海外政府・要人の対応
日本脱出を呼びかけるが「原発推進」は止まらず
4日(月)、ドイツのメルケル首相は、国内原発の稼働年数を2030年代半ばまで延長する計画を3カ月凍結する、と発表。事実上、70年代半ばから稼働していた原発の閉鎖を意味するとみられる。09年に再選された同首相は、原発の稼働年数延長を決定した際、「グリーンテクノロジーは、原子力エネルギー廃止の穴埋めをできるほど発達していない」と説明していた。
フランスのフィヨン首相は15日(火)、国民議会で原発事故に対する支援を表明。既に仏政府は救助隊派遣を行っているが、同時に東京在住の仏国民に、国外退避か日本南部への移動を公式に勧告。航空大手エールフランスに、日本脱出の臨時便を整えさせている。
欧州諸国では、意見が分かれている。フランスやイギリス、チェコ、イタリア、ポーランドなどは、原発の即時停止の呼びかけは拙速な対応として、原発の運転停止や改修・建設計画の凍結に踏み切ったドイツやスイスを批判している。
15日(火)、ロシアのプーチン首相は、日本で長期間のエネルギー不足が予想されるとして、極東での石油・ガス開発プロジェクトの加速を指示。19日(土)には、サハリン州を訪問する意向。サハリン住民が懸念する放射能汚染の不安を払拭する狙いとみられる。メドベージェフ大統領は、トルコのエルドアン首相と会談し、ロシアがトルコで原発建設を進めることで合意。ロシア外務省は、在日ロシア大使館の外交官の家族を退避させることを明らかにしている。
16日(水)、中国政府は、温家宝(ウェン・チアパオ)首相が主宰する国務院常務会議にて、新たな原発の建設計画の審査と承認を一時的に停止と決定。中国外務省は、自国民の被災地域からの退避を勧告している。
17日(木)、米国オバマ大統領は、国内原発について、米原子力規制委員会(NRC)へ見直しの必要性を要請したものの、原子力は重要なエネルギー源だと強調。さらに、米原子力エネルギー協会(NEI)は、オバマ政権による原発の半径80キロ圏内に在住する米国民への避難勧告について科学的根拠は疑問と主張し、日本政府が決定した20キロ圏内の住民への避難勧告は「健康面への影響を最小限に抑える上で十分」と評価。
日本への原発発注を決めているベトナムは、日本での原発事故は教訓とはなるものの、ベトナムの原子力発展の意図を断念させるものではない、との声明を17日(木)に発表した。ただし、原子力開発の中核パートナーにはロシアが選ばれており、理由としてロシア製原発の高い安全性が挙げられている。
18日(金)、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は、「福島原発事故を韓国内原発の一斉点検をする契機にすべき」と指示。