[社会] 福島第一原発で起こっていること・想定されること
政府・東電が明らかにしない事実とは何か?
3月12日(土)から断続的に、原子力資料情報室(CNIC)が記者会見を行い、政府(経済産業省原子力安全・保安院)・東京電力が明らかにしない「想定される事態」について、詳細な解説を行っている。
後藤政志さん(東芝・元原子炉格納容器設計者)、田中三彦さん(日立バブコック・元原子力圧力容器設計者・サイエンスライター)らによれば、現状は炉心溶融(メルトダウン)の継続、原発の爆発による大量の放射性物質の拡散という最悪のシナリオを回避するために、@炉心の冷却が必要、A原子炉格納容器自体を維持できるか、という非常事態だという。
福島第一原発の危険事態は、急激に悪化している。
止まった冷却水
地震後に第一原発1・2・3号機は自動停止。「自動停止」といっても、決して安全になったという意味ではない。制御棒を入れ、連鎖反応を止めているだけだ。
津波によって非常用炉心冷却装置が機能せず、1号機と2号機への注水は不能に。非常時に注水作業を行うディーゼル発電機も稼働せず、冷却水を送ることができなくなった。原子炉内での核分裂反応の暴走を止めるには冷却が不可欠だが、冷却水を送る機能自体が止まった。
原子炉の構造は、簡単に言うと、外から建屋・原子炉格納容器・原子炉圧力容器・炉心(燃料棒・制御棒)。原子炉圧力容器内には真水が満たされ、膨大な熱量の冷却がはかられている。原子炉格納容器内には、熱量によって発生する水素の爆発を防止するために、窒素が入れられている。
危険は大きい海水による冷却
最悪の事態を回避するために行われた方法は、次の2段階が考えられる。
@爆発を防止するため、格納容器内の放射能を帯びた水素や窒素、水蒸気を排出(ベント)。
A海水の注水
海水の注水は、原子炉格納容器と圧力容器丸ごとを冷却するという方法。既にこれは、人為的な最後の手段だ。
1号機への注水では、格納容器内の圧力は、政府の発表で想定の2倍を越えていた。技術的な観点で、もはや安全は保証できない状態。冷却のために設計基準の2倍の圧力下で注水が行われることが、既にリスクだ。原子炉格納容器の設計段階で想定自体がなかったことが、問題といえる。
1号機と3号機、定期点検中だった4号機でも水素爆発があったが、格納容器は水素や放射性物質の外部流出を防ぐのが目的。格納容器が損傷しており、内部で発生した水素が漏れ出し、それが爆発した疑いが高い。
海水による冷却も、危険は大きい。海水が高温の溶融物に直接触れると、水蒸気爆発を起こす可能性がある。格納容器は放射能の外部流出を防ぐ最後の壁だが、核分裂反応で発生した放射能・放射線によって構造物・原子炉自体が疲労劣化しているので、爆発に耐えられる強度はない。
2号機は、圧力抑制室の爆発によって圧力容器が損傷した可能性も出た。燃料棒を覆っている容器自体も破損しているのではないか。