[海外] エジプト/「市民革命」勝ち取った無名の人々 革命は始まったばかりだ!
「俺たち全員がパレスティナ人なんだ」
大学生のアハメッド君は、デモ開始の25日から参加している。多くの兵士たちが展開し、軍事弾圧の危険が懸念された2月3日深夜、デモ隊最前線で出会った彼は、次のように語りかけてきた。
「初日、警官隊は『タハリールで寝てもいい』と言いながら、寝込みを襲ってガス弾や実弾で銃撃した。ムバラクの手下の警官たちは、平然と人々を殺す」と。「ムバラクを退陣させて僕が求めること。それは人々の恐怖からの脱出。誰もが密告を恐れず、自分の考えを言えるようにすること」だという。
隣にいたオマル君が続く。「ムバラクのやってきたことは、イスラムの教えに反することだ。僕らはこれを正していかなければならない」「思いを同じくする様々な人々に出会えたことで、恐怖心はなくなった。ずっとここにいたい」。
焚き火を囲んで2人の話を聞いていたモハメッドさんが、口を開いた。「これはジハードだ。ジハードは武力とは関係がない。間違った行いを正していくことだ」。そして、「ここはガザなんだ。俺たち全員がパレスティナ人なんだ」とも。
貧困からの解放
タラートハルブ通りからタハリール広場へ入る手前でしゃがみ込んでいた3人組―ハメッド(27)さん、マハムード(26)さん、マンスール(34)さん。彼等もタハリール広場で知り合ったという。3人に仕事と収入を聞いてみた。
「会社の事務職で、月収は700ポンド(約9800円)。家賃を払ったら、お金なんか残らない」とハメッドさん。
マハムードさんはエンジニアで、月収は750ポンド(11000円)。「一部のITや金融関係の仕事を除いて、これがカイロの大卒の平均賃金さ。条件のいい仕事は、この国じゃほとんどがコネ。同族の占有さ」と怒る。
マンスールさんは電気工。一日12時間、週6日働いて月収600ポンド(約8400円)だ。「イスラムの教えでは、結婚すべき年齢だ。婚約者もいるけど、結婚できない。金がないからさ」と首をすくめた。
若者の低賃金は、医師も同じだ。カイロ大学医学部に勤める内科医のハメッドさん(30)は、勤続5年。残業代込みで月収は800ポンド(11200円)。「父は30年間、大学教授として働いていますが、月収は2000ポンド(28000円)です。国連が定めた1日2ドルの飢餓ライン以下で暮らす人々が、人口の4割を超えます。中流階級と呼びうる人々は、わずか1〜2%です。これだけで、エジプトの経済構造のいびつさが理解できると思います」。