[海外] ラテン・アメリカと21世紀社会主義 「真」の革命への手探り
──2010年7・8月号 『マンスリー・レビュー』マルタ・ハルネッカー(チリの社会学者、ジャーナリスト、活動家女性) /翻訳・脇浜義明
政権獲得しても裁量幅少ない
「左派」政権が、政権獲得後に直面する客観的状況を検討することは重要だ。
新「左派」政権が、どういう条件・制約の中で行動しなければならないかを理解する上で、重要な要因を2つ指摘する。
第1に、昔と比べると、政権を獲得しても裁量幅が非常に少なくなっている。問題は、「左派」政権には制御できない機構、例えばIMFや世界銀行のような国際金融機関を筆頭に、自立権を持つ中央銀行、巨大な多国籍企業、言うことを聞かない国防軍や諜報機関などが、政権の意思決定の自由を束縛していることだ。民衆が選んだ議会や大統領が、重要な決定をできないのである。
敵対勢力が支配するメディア
第2に、外国の巨大メディアの役割も無視できない。
チョムスキーによれば、独裁国家に抑圧が必要なように、ブルジョア民主主義はプロパガンダを必要とする。ブルジョア政党は、マスメディア支配を維持できれば、投票所で敗北しても落ち込まない。すぐにメディアが、「左派」政治家を選んだ「間違い」を大衆に後悔させ、支持を取り戻してくれるからだ。
だから新「左派」政府が、メディアの情報操作を取り締まる検閲制度や、人民の正しい情報を知る権利を擁護する法整備に乗り出すと、メディアは必死になって抗議の大合唱を行う。現代の政治戦争の勝利を決するのは、原子爆弾ではなく、メディア爆弾である。
「ベネズエラの軍拡が地域の脅威となっている」という報道キャンペーンがあった。これについて、エリク・トゥーサン(ベルギー人エコノミスト)が次のように書いている。
「ベネズエラの国防費は、ラテン・アメリカで第6位である。GDPとの対比で見ても、ラテン・アメリカ9位となる。2009年8月に大手メディアは、ベネズエラがFARC(コロンビア革命軍)に武器を供与している、と報道した。しかし、問題のミサイルは、チャベスが大統領になる4年前の1995年に、ベネズエラの港から盗まれたもので、現政権の関与する問題ではなかった」。