[海外] イスラエル/親しき顔見知り イスラエルの核兵器保有を暴露したM・バヌヌ
──ガリコ 美恵子
自国のあり方を非難し、戦い続ける男
モルデハイ・バヌヌは、自国のアラブに対するやり方を激しく非難し続けてきた一人である。イスラエルは建国以来、パレスチナ人に対する抑圧・攻撃を徹底してきた。普通の神経をしていれば、「イスラエルのやっていることは人道的に間違っている」と感じるはずなのだが、一般のイスラエル人達はそうは感じない。自国のやり方を批判するユダヤ系イスラエル人は、ごく稀である。
1980年代、イスラエル南部の砂漠の町ディモーナにある核兵器開発センターで働いていたバヌヌは、『このままでは、パレスチナ人はこの核兵器によって全滅させられる』という危機感を抱いた。当時イスラエルは、「核兵器は持っていない」と世界に断言していた。
『イスラエルが着々と進めている核兵器開発計画を、止めさせなくてはならない。そのためには、まず事実を世界に伝えることが第一歩だ』と、バヌヌは考えた。ユダヤ人であることがつくづく嫌になり、キリスト教徒に改宗した彼は、イギリスのサンデータイムズ紙上で詳細な報告書を暴露し、その後モサドに拉致された。結局、母国に連れ戻され、18年間刑務所で暮らした。
2004年に刑務所から釈放された後も、外国に出ることは無論、《外国人と口をきいてはならない》とされている。
しかし、彼は外国ジャーナリストのインタビューに答え続けた。このため、6年間にわたる裁判が繰り返され、2010年夏、最高裁判所は、3ヶ月間の独房入りを判決した。
刑務所に送られる寸前のインタビューでバヌヌが言った言葉は、印象的である。『シェイム・オン・ユー』(恥ずかしいと思え)。自分がインタビューに答えた世界各国のメディアの名前を連ねてから言った言葉である。日本のテレビ局や新聞社の名前もたくさん出てきた。
『世界各国のジャーナリストの皆さん方。インタビューして、僕のことを記事にしましたね。その結果、私は刑務所に再度入れられることになった。罰せられるのは私だけで、あなた方は何もしない。それなら今後一切、私はあなた方のインタビューにお答えしません』─バヌヌははっきりと言い切った。私は、バヌヌのこういった頑固さ、堂々たる強さが大好きである。