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更新日:2011/03/14(月)

[コラム] 迫共/問題だらけの「子育て新システム」

現場に丸投げ─理念なき合理化

「子ども・子育て新システム(以下、「新システム」)」という言葉をご存じだろうか。管内閣が消費増税とともに就任時に打ち出した政策で、幼保一体化、待機児童解消などを目的とした保育政策である。内容はいまだに固まっていないが、政府は2013年度の施行を目指して、ワーキングチームを稼働させている。各地でのシンポや説明会では、方向性が見えず、現場関係者からの批判が相次いでいる。 現状の方向性をお伝えして、その危険性を訴えたいと思う。

老人・障害者の福祉サービスでは、介護保険が導入されている。行政が要介護認定をつければ、その度合いに応じた介護サービスが受けられる。その時々の都合で、認定された以上の時間、度合いのサービスが必要な場合もあるが、その分は自費負担となる。「新システム」は介護保険をモデルにしており、保育を全面的に変えてしまおうとしている。

行政の仕事は、子どもの保育の必要度(仮に「要保育」とする)を判定するだけで終わる。後は、保護者が通いたい施設に行って、入園相談をする。施設側は「要保育」時間に合わせた保育を提供する。

しかし、6時間、8時間の保育を受ける子と、3時間だけの子がいれば、集団生活のリズムは作れなくなってしまう。クラス単位での行事も、そのための練習も難しくなる。これまでの施設保育では、集団でルールを守って生活し、ひとつの目標に向かって準備することで、子どもの成長を引き出してきた。毎日の積み重ねに必要な時間は、ある程度決まっている。その前提が根本的に崩されてしまう。

また、経営する側としても、提供するサービスによって保育所の収入が決まるため、ビジネスライクな運営に傾いてしまう。これまで以上に人件費抑制が進むだろうし、手のかかる子どもを引き受けない施設が出るといった弊害も予想される。

政府は「新システム」のねらいの一つに、「待機児童の解消」をあげている。たしかに「新システム」が導入されれば、待機児童という概念自体がなくなってしまう。行政は「要保育」認定をするだけで、あとは保護者が入れる施設を探すのだから、他府県であっても、入れるところがあればそこに行けばいいことになる。入れなくてもそれは「ミスマッチ」にすぎず、行政は施設と保護者の間に立つ(つまり待機児童を解消する)義務がなくなるということだ。

予算削減のために、文科省(幼稚園)・厚労省(保育園)にまたがる保育行政を一元化(こども家庭省・こども園)して、地域行政の負担も縮減、待機児童も見かけ上で解消させるのがねらいとしか思えないが、これらはいずれも大人の側の都合であって、「子どもの最善の利益」とはとうてい繋がらない。子どもの育ちをどうしたいのかが、見えてこない。

6歳までの教育をどのような理念・目標で立ち上げていくのか、国全体で共有できるカリキュラムが、イタリアやニュージーランドなどには存在するが、日本ではまだ確立されていない。まず子どもの育ちを根本において国の目標を明確化し、その実現のために幼稚園・保育園の垣根を取り払うという話にするべきだろう。現状では幼稚園も保育園も、一致協力は難しい。

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