人民新聞オンライン

タイトル 人民新聞ロゴ 最新版 1部150円 購読料半年間3,000円 郵便振替口座 00950-4-88555┃購読申込・問合せはこちらまで┃人民新聞社┃TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441┃Mailto:people@jimmin.com
反貧困社会編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事
植田圭子さんプロフィール
法政大学在学中、日中学院別科にて中国語を学ぶ。卒業後、中国雲南省昆明の雲南民族学院で1年間日本語教師を務める。その後渡米、マサチューセッツ州スミス大学などで日本語教師を勤める傍ら、マサチューセッツ州立大学教育学部で英語教育(ESL)多文化教育で修士習得。現在ノースキャロライナ州立大学ローリー校で専任日本語講師として日本語教育に従事。

▲オバマ政権を「社会主義だ!」として批判するティーパーティー参加者 オバマ政権批判キャンペーンで全米を遊説した共和党・ペイリン 今後、オバマ政権は共和党への苦しい対応が予想される
更新日:2010/12/10(金)

[海外] アメリカ/オバマ・民主党大敗の原動力「草の根運動」
──ノースキャロライナ州立大学ローリー校講師 植田圭子

米中間選挙台風の目 ティーパーティーに集う人々

米中間選挙は、民主党の大敗に終わった。若者、女性、マイノリティーが投票所に向かわず、「ティーパーティー運動」と呼ばれる右派運動が起爆剤となり、共和党躍進へとつながった。

国勢調査によると、「ティーパーティー」を自称するアメリカ人は18%であり、共和党の一部に過ぎない。選挙結果を見ても、激戦・接戦を繰り広げた地域が多く、必ずしもアメリカ人が共和党一色に変わったわけではない。しかし、ティーパーティー運動は、アメリカ人の物の考え方を知り、今後の米国世論の行方を見るうえで、大きな示唆を与える。

ティーパーティー市民運動がメディアに登場し始めたのは、2009年4月頃だ。出口の見えない不況と失業増加の中で、オバマ政権に業を煮やした人々が、ボストン茶会を真似た衣装で集会やデモを始めた。小さな政府、減税、国民年金の維持を掲げたプラカード、怒りに満ちた感情的な叫びが、テレビの画面に溢れた。ちなみに、「パーティー」は「宴会」ではなく、「党」を意味する。ティーパーティーは「お茶会党」とでも訳すべきだろう。

9月14日のデラウェア州の共和党予備選挙では、ティーパーティーのエネルギッシュな後援に支えられ、保守クリスチャンで過去に金銭スキャンダルを持つクリスティン・オドネル候補が、元デラウェア州知事で9期当選の共和党穏健派現職下院議員マイク・キャッソルを降した。その後、ティーパーティーが支援する候補者は予備選挙で勝利を収め、中間選挙の台風の目となった。

ティーパーティーは、共和党より更に保守で、極右保守派に位置する。支持者たちは、退職者、失業者、クリスチャン、上流中産階級と多彩で、主として45歳以上の白人男性の集まりだ。思想的には、二つの流れがある。一つはアダム・スミスを信奉する純粋自由放任主義者で、レッセフェール派と呼ばれる。もう一つは、社会保守主義者である。

レッセフェール(自由放任主義者)は、上流中産階級に属し、すべてを自由市場に委ねる資本主義支持者で、政府の市場介入や規制を極端に嫌う。政府の役割は治安警察程度で十分だと考え、個人の生活の善し悪しは自己責任だと考える。社会福祉、生活保護、失業保険政策などの政府支出に反対で、「オバマは貧乏人や黒人ばかり援助して、自分たちの利益になることは何一つしてくれない。今の政府では、中間層や裕福層の声が反映されない」と怒る。彼らは株収入税の廃止、累進課税の廃止、所得税率の一律化を望んでいる。

社会保守主義者には、@宗教、A人種、B国粋主義/愛国主義などが含まれる。

@は、世論調査によると、ティーパーティーの81%がキリスト教徒で、特に保守的な南部キリスト教徒だ。反イスラム主義で、中絶、同性同士の結婚にも反対する。前ブッシュ大統領を支持したのもこのグループで、山積する政治・国際・環境問題を悉く無視し、中絶・同性同士の結婚反対という唯一の宗教的理由だけで、ブッシュを強力に支援した。

A人種問題では、《白人対マイノリティー》という構図が見える。ティーパーティー運動が「50年代のアメリカへの回帰」を叫ぶことでもわかる通り、公民権運動以前の、白人が権力を握っていた古きよき時代のアメリカへ戻そうという含みがある。ティーパーティーたちは強く否定しているが、黒人やマイノリティーに対する人種差別思想が存在することは否めない。

彼らが低所得者のための生活保護や保険に反対するのも、表立たない差別の延長だと思われる。福祉政策の恩恵を受けているのは、ほとんどが黒人やマイノリティーたちだからだ。

B国粋主義者、愛国主義者は、銃所持合法賛成派、強いアメリカ、軍事国家アメリカの賛成派である。元々、アメリカはフロンティア精神に満ち、無法地帯で銃で自衛をしながら、農地や金を求めて南へ西へと進んでいった人々を祖とする。今でもその自主独立、個人主義精神は綿々と息づき、干渉嫌いの気性は変わらない。

ティーパーティーには、前記のカテゴリーに当てはまらない人々も多い。金融恐慌の原因はブッシュ政権時の金融自由化政策やウォール街にあるのだが、ティーパーティーは、その原因をオバマや議会に求め、「自分が失業したのも再就職できないのも、オバマのせいだ」と考える。

Foxnewsという保守党のプロパガンダ的テレビ放送局が流す、「オバマはイスラム教徒だ! アメリカ人じゃない! 社会主義者だ!」といった、根拠はないがわかりやすい報道に耳を傾け、「オバマの権力行使は憲法違反だ!」と繰り返しながら、その内容は理解できない。オバマ叩きをすることで溜飲を下げ、「誰でもいいから、首を挿げ替えさえすればいい」と考える。

続きは本紙 【月3回発行】 にて。購読方法はこちらです。
[HOME]>[ 海外 ]


人民新聞社 本社 〒552-0023 大阪市港区港晴3-3-18 2F
TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441 Mailto:people@jimmin.com
Copyright Jimmin Shimbun. All Rights Reserved.