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東京書籍/232頁/2010年5月発行/1400円+税
更新日:2010/11/29(月)

[情報] 書評/白い河 風聞・田中正造

一介の農民の悲哀を描いた立松和平氏の絶筆

同年代の立松和平がガンでこの世から逝ったのは、今年2月であった。彼に絶筆があると聞いていたが、それがこの本である。

彼の家族が関わっていた足尾銅山を、一介の農民の視点で優しいまなざしで描き出している。残念ながらその結末は彼の肺ガンによってかき消され、結末なきままに完結してしまうのであるが、それも今となったら、物語の一部であるように思える。

「連合赤軍」を生々しく描いた彼であったが、この物語は一介の農民の悲哀と愛惜にあふれている。死を予期して書き連ねたことが伝わってくる。彼が毎日出版文化賞を受けた『毒─風聞・田中正造』が、反公害運動の中心人物であった田中正造の生き様に焦点が当てられているのに対し、この本は真正直な農民活動家の日常生活と悲哀に寄り添いながら、足尾鉱毒事件を追及している。

日本の公害の、あるいは公害運動の原点とも言える栃木県足利郡谷中村、足尾。その日本における初めての公害反対闘争を戦い抜いた、田中正造と農民たちの記録である。この闘いの中心人物は田中正造であるが、この物語では農民たちに焦点が当てられている。とりわけ足尾の渡良瀬川下流域の村で、大きな被害を被った農民たちの怒りと運命が描かれている。

日清・日露戦争に富国強兵の掛け声の下、資源の乱開発にあけくれる明治政権下、それに翻弄される農民が反旗を翻す、その先頭に立つ田中正造。それを日常の農民の生活の中で描いているのが、この本の特徴だ。そこが立松和平の一つの境地なのであろう。田中正造が直訴に失敗した後、下野し農民に学び、ともに生きて行こうとする姿は、本当の主人公は農民であることを明らかにしていく。

しかし、足尾銅山の鉱毒に抵抗した農民たちは、ことごとく日露戦争に赤紙一枚で動員されていく。物語は、そのことに矛盾を感じつつ、ロシア軍に向って無謀な突撃を命令され余儀なくされていくところで、絶筆となる。

立松和平という全共闘を駆け抜けた作家と、お上に逆らいつつ天皇の命に逆らえずロシア軍に突撃していく貧農、複雑な思いに一気に読了した。あまり深くは知らなかった立松和平であったが、農民の軍隊への動員に深い哀悼の念が自然と沸いてきた。

※ お詫びと訂正 ※

前号1面の「未来のない原発ビジネスが活発化する理由」の記事で掲載した図2のタイトルは、正しくは「米国の原発の開発状況」でした。お詫びの上、訂正します。(編集部)

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