[コラム] 河合佐千夫/火付け役=前原外相の危険なネライ
協議したり相談したりしない人たち=民主党
海上保安庁を管轄するのは国土交通省で、事件当時の大臣は前原でした。以前から中国は尖閣諸島周辺に意図的に出漁させ、緊張状態は続いていたようです。こうした状況下で船長逮捕まで至ったのは、決して偶然ではなく、また、末端の判断ではないと思います。
おそらく、前原が「事あれば逮捕も」との方針を出していたのでしょう。彼はタカ派で、しかも対中強硬派です。
このあたりのこと(つまり、今回の事件の火付け役が前原だったということ)を、朝日新聞は一度だけ報じました。さらに、民主党党首選で菅が再選され、岡田に幹事長を引き受けてもらう際に、岡田は「自分の後釜(外相)は前原に」と条件をつけたとも書いていました。すでに大騒ぎになっていた尖閣諸島問題は前原にやらせろ、ということです。岡田の真意が、「前原が勝手に火をつけたのだから、火消しもちゃんとやれ」だったのか、「この問題は、最後まで前原にやらせてやってくれ」だったのかは、わかりません。
外相になった前原はアメリカに飛んで、ヒラリー・クリントンと会い、「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲」と言わせました。実際は、「日本の施政権の及ぶところは適用範囲」と当たり前のことを言っただけで、尖閣諸島の帰属に対して、アメリカは中立です。さらに、「早急に話し合いで解決するように」要求され、ウラでは思いやり予算や普天間基地移転問題などで、思いっきり太いクギを刺されたようです。
ただし、これが前原のネライだったのかも知れません。日米安保条約の重要さを際立たせ、ナショナリズムを沸騰させました。テレビやラジオに出てくるヤカラは、「船長を殺せ」だの「自衛隊を派遣しろ」だの、言いたい放題でした。
大臣はお飾りで、全ては官僚が取り仕切っていた自民党政権時代には、こういうことは起こりません。政治主導になると、誰が大臣をやるかで、結構いろんなことが起こるようです。ただし、鳩山政権の普天間基地問題にしても今回にしても、大臣がてんでバラバラでドタバタするのはみっともないほどです。あの人たちは、協議したり相談したりしない人たちみたいですね。