更新日:2010/11/15(月)
[コラム] 井上澄夫/尖閣諸島は一時的に日中共同管理地域に
地球は一体誰のものか?
「我が国固有の領土」の話になると、日頃冷静な人が突然、熱くなる。まるで「愛国感情」や「国家主義」という地下のマグマが、理性の地殻を突き破って噴出するかのようだ。日本側が尖閣諸島と言い、中国側が釣魚台などと呼ぶ島嶼を以下「あの島嶼」と呼ぶことにするが、「あの島嶼」が日中どちらの領土かという話になると、いわゆる左翼も、その多くが街宣右翼みたいな思考にとらわれてしまう。
そもそも地球はいったい誰のものか。地球はそこに住むすべての人、すべての生き物の共有財産である。北米や台湾の先住民、アイヌの人びとなどは、土地を私有するという考え方を持たないが、それこそ人類の良識である。その良識が暴力的に無惨にも踏みにじられてきたのが近代史の実相だった。
帝国主義列強がそれぞれ植民地獲得に狂奔した時代、領土の拡大はひたすら侵略と占領によって強行された。真っ先に国旗を押し立てた国が、その地、その島を領有できるという「ルール」は、互いに出し抜き合って競合しつつ植民地獲得に邁進した帝国主義列強間の不安定な黙契にすぎず、それゆえその「ルール」が破られると、戦争で決着をつけた。
2007年8月2日、ロシアの小型潜水艇ミール1号と2号が北極点周辺の海底を探査し、海底にサビに強いチタン製のロシア国旗を立てた(同8・3付『朝日』)。今年8月には、中国の有人深海潜水艇「蛟龍1号」が、南シナ海の海底に中国国旗を立てた(『ニューズウィーク日本版』10・6号)。いずれも明らかに資源開発権の主張だが、そんなコッケイ劇によって、国際法上、排他的な開発権が認められるわけではない。
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