[情報] ラテン・アメリカと21世紀社会主義A 党の役割を根本的に転換
──『マンスリー・レビュー』7・8月号マルタ・ハルネッカー(チリの社会学者、ジャーナリスト、活動家女性)/翻訳・脇浜義明
誤謬回避の創意工夫
これらの思想や発想を一番先に取り入れたのが、中米の武装政治運動サンディニスタ革命であった。革命政府は、ラジカルな聖職者を閣僚に入れたり、複数政党主義を採用するなど、左翼革命政権としてはまったく新しい発想を実践した。グアテマラのゲリラ団の一つ「貧者のゲリラ軍」(EGP)は、先住民を革命の基本的原動力と考えて革命の仲間に迎え入れた最初の政治団体であった。
こうして、政治団体は社会に責任を持ち、大衆層から遊離してはならないことを、活動家が本当に理解し始めた。活動の場である社会基盤を同質的なものと見る傾向から脱皮し、多様性の中のまとまり、人種、文化、ジェンダーの違いと独自性を尊重しなければならないことを学習した。
違いを尊重するということは、場に合わせて使用言語に配慮し、種々のテーマに応じてコミュニケーション形態を変えること、そして現在のような情報化時代、イメージ時代においては、オーディオヴィジュアル媒体も非常に重要であることも学んだ。
彼らはヘゲモニー主義(つまり、上からの指導、地位を独占し、そこから命令や指示を下すやり方)を克服すること、方針と行動を押し付ける強権的政治を克服する決定をした。また、ヘゲモニーをとる、つまり所与の政治団体の政策を社会の広範な層に自分たちの路線だと思い込ませることが重要であることも、理解し始めた。
左翼は、大衆運動との関係でも成熟していった。大衆運動を単に党決定の伝達ベルトとして扱うのでなく、自ら闘いの目的を発案・決定できる自立的なものととらえるようになっていった。
党は様々な大衆運動の目的を調整することが役目であって、目的を上から指示することではないことを認識していった。大衆運動にとって代わるのでなく、それを支援し、一緒になって進みながら、それらに方向性を提供することが党の任務であり、人民の自発性を破壊するような垂直的指令的態度を捨てるべきだと思うようになった。人民の声に耳を傾け、人民の心の状態を正しく診断し、大衆運動の主体で当事者である人民自身が提起する問題解決案を真剣に聞くことの重要性を理解するようになった。
人民こそがすべての主人公であり、そのことを人民自身に実感させるように、左翼は解放の教育者にならなければならない。人民が歴史的に蓄積しているすべての知恵の力を発揮させるように引き出さなければならないことを認識した。
労働者階級だけを軸とする労働者階級中心主義を放棄し、人々の多様性・複数性を尊重すること、そのためには、まず被差別階層の人々―女性、先住民、黒人、若者、子ども、年金生活者、多様な性的傾向の人々、障害者等―の人権を確立する闘いにかかわるべきであることを学んだ。
最後に、左翼は民主主義こそが人民が最も大切にする目標の一つであること、社会主義のもとで民主主義が全面開花するのであるから、民主化闘争と社会主義闘争が不可分であることを認識した。