[海外] パレスチナ/ガザに響くワルシャワ・ゲットーの声
──「ジューイッシュ・ボイス・ファ・ピース」〔平和を求めるユダヤ人の声〕副会長・セシール・スラスキー
ナチ化するイスラエル
ヒトラーの迫害を受けたユダヤ人は、ルネ・カサン(「世界人権宣言」を起草したフランスの法学者・裁判官)のように、すべての人に適用されるべき基本的人権思想を広めた。しかし、それから60年、イスラエル・ユダヤ人は、その伝統に反する行為を行っている。
米国でもユダヤ人の多くはリベラルで、80%がオバマを支持したが、パレスチナ問題となると、反動的になる。
ガザと西岸地区では、ホロコーストと酷似した事態が進行している。ナチがゲットー内に「協力者ユダヤ人」を組織したように、イスラエルは「協力者パレスチナ人」を組織して、分断支配を図る。
ガザには、ゲットーと同じ闇市が生まれ、病気や不衛生が充満している。金のある者が生き延び、混乱の中で利益を貪り、貧者は死ぬしかない。
西岸地区の農民は、野良仕事をするにもいくつもの許可が必要で、占領行政と、その下請け機関の官僚主義や規制のために、人々はゆっくりと死んでゆく。
イスラエル本国での人権活動家弾圧も、ヒトラー治世と同じだ。深夜の急襲逮捕や、言論機関抑圧令。また、チョムスキーのような人物の入国を拒否し、人権団体潰しに血道をあげる。健全な民主主義社会とは、ほど遠い。
私は今、ワルシャワ・ゲットーで死んだ曾祖母の、祖父母に助けを求めた手紙を読み返している。同時に、ガザの友人からの手紙も読んでいる。
どちらの手紙も、語調が非常によく似ている。どちらも閉じ込められた囚人であり、食糧や日常品の欠乏に苦しんでいる。「せめて、若者だけでも外へ逃してやりたい」と望んでいる。明日の命が定かでない。何よりも顕著なのは、両者とも、「世界が自分たちの運命に無関心だ」と思っていることだ。
1400人を殺し、多数を負傷させたイスラエルの「鉛鋳造作戦」(08年末〜09年1月)は、ガザの150万人住民全体を対象にしたテロ作戦であった。こんなことができるメンタリティは、ナチのメンタリティである。
ナチがユダヤ人を「ばい菌」と呼んだのと同じく、イスラエル政府高官がパレスチナ人をそう呼ぶのを聞いたことがある。私は背筋が寒くなった。このメンタリティは普遍的なものなのか?
ユダヤ人がナチと同じことをやっているのだ。迫害と恐怖のトラウマに病むイスラエル・ユダヤ人は、同じ迫害と恐怖と差別と憎悪をパレスチナ人に転嫁して、イスラエルを守るという、《新しい伝統》をユダヤ文化の中に持ち込んだ。普遍的な人道主義の伝統を大切にするユダヤ人として、この破壊的文化と闘わなければならない。