[社会] 現場を振りまわし続ける介護保険制度
──北山通
理事長交代・組織再編で大コケ
ホームヘルパーの事業所を立ち上げて、10年が過ぎた。2000年4月に施行された介護保険制度と同時のスタート。
母体となった有償ボランティアグループからスタッフとして関わってきた僕は、成り行き上、「(事務のできない)事務局長」兼「(専門職としての経験のない)管理者」兼「訪問介護員」として活動することになった。
「事務のできない」というのは文字通りで「簿記のボの字も知らない」、事業所スタートの1ヵ月前にホームヘルパー2級研修を修了した即席ホームヘルパーで、理事会のたびに「学識と経験豊かな」理事さんたちにボロクソ言われる日々が続いていた。そして、案の定2年目に大コケ! 組織再編の波がやってくる。
理事長の交代。「簿記のボの字も知らない」僕に、事業経営のイロハを叩き込んでくれたのは彼なのだが、他の理事と違って現場たたき上げの「商売人」である彼が、僕に指示したのは、「簿記2級をとれ!」と目標数字の設定と賃下げだった。
その結果、事業所内部に唯一いた経験豊富なヘルパー主任が離脱。残った経験の少ない常勤ヘルパーたちと、事業所再建をすることになった。
有償ボランティアグループからの活動によって関係をつくってきた社会資源、人的資源は多く、たくさんの仲間たちに支えられて、何とか再建は軌道にのることができた。
障がい当事者が事業所を選択できるようになった2003年の「障害者支援費制度」がスタートしてからは、「北山がやっている事業所なのだから使ってやろう」と、それまで関係のあった人たちが契約をしてくれて、とても助かった思いがある。
「何とか生き残れた」がこれからが正念場
当初から様々な問題点が指摘されてきた介護保険制度は、修正が繰り返され、そのたびに介護報酬の削減(2003年マイナス2.3%、2006年マイナス2.4%)がなされるとともに、現場に多大な事務作業を強要するなど、現場を振り回し続けてきた。
わが事業所の存続に大きな貢献をしてくれた「障害者支援費制度」は、2006年、「稀代の悪法」と言われる「障害者自立支援法」にとってかわった。また、増え続ける要介護高齢者=社会保障費の増大への対応として行われた2006年度の介護保険制度改定は、実質的に「軽度」の利用者さんの切り捨てをはかるとともに、介護報酬の引き下げを図った。
そして、「2008年度、老人福祉事業者の倒産件数は過去最多」(『介護経営白書2009年度版』)。その中でも「訪問介護系の倒産が増加傾向(同)」と言われるような状況が生み出される。正直、「良く生き残ることができたな」と思う。