[反貧困] 私はこうして生活保護受給者となった 調理師時代のイジメが原因の吃音・うつを抱え失業へ
うつ病、不眠そして自殺願望
兼本啓三さん(仮名)がホームレスになったのは、パチンコ店を解雇され、家賃を払えなくなったためだ。同居していた姉は、2人の子どものシングルマザー。姉弟で家賃を折半していたが、弟の家賃を肩代わりする余裕はない。マンションを引き払い、安いアパートに引っ越すことになった。こうして兼本さんは、住む家を失った。
現在兼本さんは、うつ病の治療中である。ケースワーカーの薦めで、吃音治療のために心療内科を受診したが、医師は「うつ病」と診断した。不眠に加え、自殺願望が兼本さんを襲う。(文責・編集部)
職場のイジメ
吃音とうつ病の原因は、調理師修業時代のイジメだと思っています。調理師学校を卒業後、京都のホテルにある和食レストランで2年間修行しました。日本料理では、「切り口が変わる」との理由で、左利きを矯正しないと使ってもらえません。左利きというハンディに加え、もともと無口なので、なかなか職場に馴染めませんでした。
調理師の世界は、今も徒弟制度の世界で、上下関係は厳格です。修業時代の長時間労働に加え、兄弟子からの日常的なイジメや体罰を受け、精神的にも疲労が蓄積、吃音が出始めました。原因ははっきりしていたので、厨房での修行に限界を感じ、退職しました。
その後は、トンカツ屋や定食屋などで、調理師として働きました。当時月給は、18万〜25万円です。ひとり暮らしだと何とか暮らせる給料でしたが、リーマンショック以後の経済不況は、飲食業界を直撃。店の客が激減し、残業代カット、整理解雇の噂なども飛び交い、見切りをつけました。自己都合退職です。
当時の飲食業界は、どこも火の車です。調理師としての就職は、当分無理だと思いました。そこで、この際、苦手な接客に挑戦して、自分を変えてみようとの思いもあって、パチンコ店に飛び込みました。
ところが、元々人付き合いが苦手な上に、吃音が重なり、フロア・マネージャーから「君は向いていない」と退職を迫られ、仕事を失いました。