[反貧困] 派遣から嘱託社員へ─「均等待遇」求める契約社員の解雇
非正規労働の現場から
派遣法改正が、遠のいている。民主党が参院選で惨敗し、政府提出の骨抜き改正案すら、自民党により改悪修正される可能性もある。派遣という間接雇用の不安定さは言うまでもないが、有期雇用を繰り返す直接雇用でも不安定さは、変わらない。
なにわユニオンの中村研さんに、そうした直接有期雇用の争議事例を紹介してもらった。いずれも苦しい闘いを強いられている。(編集部 山田)
●昭和設計 ウルさい契約社員はクビ! 〜家賃補給金を申請、しかし却下〜
鰹コ和設計は、大阪市港区にある設計会社。上下水道の企画・設計なども行う業界大手だ。
Fさんは、2004年2月に同社総務部へ派遣され、5回の更新を経て同年12月に嘱託社員(後に契約社員に職名変更)として直接雇用された。06年4月には情報開発室へ異動となり、設計図書・竣工写真の保管、貸し出しの他に、HPの変更、記事の収集などを担当。労働契約書も従前の嘱託規定から正社員と同じ就業規定に変更されたことを、総務部長は確認している。
このためFさんは、就業規則にのっとり、1万3500円を上限として支払われる家賃補給金を請求したが、同社は「この手当は基本給に含めて支払っている」と却下したのである。
ところが、@契約書には基本給の金額のみで内訳に家賃補給金は記載されておらず、A給与明細の「家賃補給」の欄はゼロになっている。さらに、B家賃補給金の申請は申告制だが、Fさんに申請した覚えはなかった。
このためFさんは、「ユニオンひごろ」に加入。@家賃補給金の支払い、A均等待遇などを求めて、団体交渉の申し入れを行ったのである。
ところが会社側は、団交に応じないばかりか、Fさんを雇止めにして事実上の解雇。労組は、08年6月、家賃補給金についての不誠実団交救済と、雇い止めについての不誠実団交救済の申し立てを労働委員会に提訴(11月)。さらに大阪地方裁判所に「Fさんの雇い止めは違法であり無効である」として、地位保全の提訴を行い、全面対決となっている。
「この事件は非正規雇用の不安定さを著しく表した争議だ」と中村さんは語る。多くの企業で期間満了雇止めという形で、事実上のクビ切りが行われ、泣き寝入りを強いられている。これは、「企業に対し個人は立場が弱いというだけでなく、労働者救済機関の機能不全・司法判断の保守化も大きい」と中村さんは指摘する。