[政治] 橋下新党=「大阪維新の会」が大阪市議補選(生野区)で圧勝
「大阪都」に向かって暴走する橋下府知事
「大阪市役所は金をむさぼり食うシロアリ」「シロアリはしぶとい」「府と市の財布を一つにして、新しい役所を作るしか大阪の再生はない」-大阪市議生野区補欠選挙(7月11日投開票)での橋下徹大阪府知事の演説だ。
大阪府と市を統合し、「大阪都」をめざす橋下知事にとって来年の統一地方選は、自らが代表を務める「大阪維新の会」(以下、維新の会)勢力拡大の正念場。その前哨戦となった生野区補選は、「維新の会」=角谷庄一氏が、53.2%の得票で民主・共産の候補を破って当選。福島区補選での圧勝に続き、2連勝となった。「(大阪)市は負けを認めるべき」と、橋下知事の鼻息は荒い。生野補選で、有権者は橋下知事をどう捉えたのか?生野区在住の平安名常徳さんに話を聞いた。(編集部・一ノ瀬)
生野区が抱える課題には触れず 「歯切れはいいが、中身がない」
橋下知事は連日のように、生野区に入り、リード文で紹介した過激な「口撃」を繰り返した。しかし平安名さんは、「橋下知事の演説は歯切れがいいけれど、具体的な中身が何もなかった」と語る。
「大阪市は役所天国」「横浜市は、大阪市と人口が同じだが役人の数は半分」。橋下知事がよく使ったフレーズだ。しかし、これは両市の経済規模や、昼間人口の違い(横浜は流出で減少、大阪は流入で増加)を無視した乱暴な議論だ。事実の一部を自分の都合のよいように取り出すのは、橋下知事の常套手段だ。
生野区には独自の問題がある。まず「陸の孤島」と呼ばれるほどの、交通の便の悪さ。地元からは、地下鉄千日前線延伸の要望が繰り返し出されてきたが、財政悪化や採算がとれないため、話は浮かんでは消えていった。
また、子どもの減少やワンルームマンション増加などの傾向もある。しかし行政も既成政党も、これといった街づくりの方針を持たず、放置されてきたために、住民の間に不満がたまっていた、と平安名さんは見る。「そこに橋下知事のつけいる隙があったのではないか」(平安名さん)。
維新の会・角谷庄一候補は、そんな生野区の問題に触れることなく、ひたすら「大阪をよみがえらせよう」「大阪都が必要だ」と、イメージ戦略だけで押しまくった。
※大阪都構想…大阪府と大阪市の「二重行政」解消のための「府市合併」構想。大阪市・堺市(政令指定都市)と大阪市周辺の市を廃止して、20〜30万人の人口規模の「特別区」に再編し、旧市の行政機能や財源を「大阪都」に移譲・統合する、というもの。