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更新日:2010/09/01(水)

[コラム] 迫共/危なっかしい民主党の「幼保一元化」

人気取りやパワーゲームに利用するな!

参院選が終わった。大方の予想通り、自民が復調、民主は過半数を超えずとなった。選挙前に打ち出された子ども関連施策も、多少はバランスよく実施されていくのだろうか。

民主党政府は6月末、2013年度をめどに、保育園と幼稚園を「こども園」に統合し、監督官庁の一本化(現在は厚労省-保育園、文科省-幼稚園)、資格の統合などを検討していると発表した。

幼保一元化に関しては、1960年代からの長い歴史がある。厚生省と文部省の主導権争い、業界団体の反対などで、長らく構想どまりで進展しない話であった。

だが、施設や資格が統合されると、どういうメリットがあるというのか。まず、@監督官庁が1つになると、対応する自治体もコストを削減できる。これ自体はいいことだろう。

A「空き待ちの保育園」と「定員割れの幼稚園」が、バランスよく並存できるような考えもある。これは、かなり眉唾な議論である。例えば、大阪市内でも場所によっては、定員を割る保育園がある。一方で、待機児童が多い地域は、幼稚園も利用者が多く、最近よく言われる「小学校の空き教室を利用した保育」についても、そのような地域では「空き教室」自体がないのが現状だ。

逆に、新たな問題も生じる。幼稚園どうし、保育園どうしの距離は、ある程度あけて開設するよう法令で定められているが、幼稚園と保育園の距離は規制がなかったため、施設が統合されると、ごく近距離に「競合店」ができる場所もある。法人登記された土地や建物は移転が非常に難しいため、法令改正がなければ、どちらかが淘汰されざるを得なくなるだろう。また、統合後しばらくは人材確保が難しく、混乱した状況になるだろう。

「こども園」には、補助金をめぐってさらに気になる施策がある。「子ども手当」や給食費など、子ども関連の予算を地方に一括交付し、分配については地方の裁量に任せる、というものだ。原口総務相がしきりに発言している。

「こども園」を含む子ども関連施策について、国の管理責任はなくなり、地方が独自に予算執行できることになる。弱者保護の基準を国が放棄すると、最低限守るべき基準が形骸化するだろう。橋下大阪府知事や竹原阿久根市長のような独裁的人物が、偏った施策を強行する危険性が高まり、不安を感じる。子ども施策は、長期的展望に立って実施しなければならない。在任中かぎりの人気取りやパワーゲームに利用されることだけは、何としても避けなければならない。

小泉改革を見るまでもなく、「ぶっ壊す」のは簡単であり、一種の痛快さもある。しかし元に戻すには、非常に手間がかかる。旧態依然としているのがいいわけではないが、教育の場がいじり回されるのは許しがたい。現場に配慮しながら、拙速を避けてやっていただきたい。今はそのように思うのが精一杯である。

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