[政治] 参院選/消費増税にNO突きつけた有権者
巨視的論議できない政治モデル探しはもうやめよう
有権者は参院選で消費税値上げに対し、明確にNOを突きつけた。
消費税増税について、各新聞社の世論調査では、選挙後も6割が「賛成」ないし「やむなし」という結果が発表されている。しかし世代別に見ると、20代に反対が多い。雇用の不安定化のために貧困化した若者は、切実にNO!と言い、「無党派層」の主流を占める彼(女)らが、民主への批判を投票行動に表したと思われる。
当分、消費税値上げ論議は、自民からも民主からも出てこないだろう。今回の選挙結果で、評価できる最大のポイントだ。
大手メディアの批判精神が劣化
ところが、選挙後の各紙の論説を見ると、「消費増税 議論を」(朝日新聞)を筆頭に、全国紙はすべて消費税値上げに賛成する論陣を張っている。及び腰になった民主党の尻を叩くかのようだ。
普天間基地移転問題でも大手メディアは、「日米の信頼関係」「安保の重要性」を強調し、「県外・国外」を主張した鳩山首相を批判し続けた。彼らは、金持ち層の利益と主張を代弁する機関になり下がった。
数十年後の人々が、今日の新聞を見る時、それは、我々が戦中の翼賛新聞を見るかのような気分になるのではないだろうか。ジャーナリズムにとって批判精神の欠如は、死を意味する。参院選中も沖縄基地問題の代わりに、大相撲のスキャンダルを報じ続けたメディアが、後世からどのような評価を受けるか、考えるべきだろう。
基地問題の出口をふさいだ菅首相
一方、消費税論議の影で、沖縄基地問題が隠されてしまった。弱体化した民主党政権が、強権的に辺野古新基地建設を進めるとは考え難いが、「8月末」と期限を切られた普天間基地返還が、無期限延期となってしまう可能性が高い。
菅首相は「基地問題はどうにもならない。もうタッチしたくない」と喜納昌吉参議(沖縄選出)に漏らしたという。発言自体は、昨年9月、菅氏が、副総理・国家戦略担当相だった時のものだが、鳩山元首相の失敗を間近で観た菅首相が、米軍基地問題に向き合うことはないだろう。
沖縄に集中する米軍基地をどうするのか? 議論の再活性化が必要だ。日米安保条約の見直しも含めて、従属的日米関係の正常化を求めていくための、沖縄と連携した運動が求められている。
左派の退潮
投票に際して「悩んだ」という声をたくさん聞いた。民主党への失望・批判を、自民党に託すわけにはいかない。そもそも自民と民主の違いが、ニュアンスや顔の違い程度しかなくなっているからだ。
こうしたなか、社民党・共産党が民主党批判の受け皿になり得ないのは、なぜなのだろうか? 社民党は基地問題で筋を通し、共産党は消費税増税に関して当を得た批判を展開した。両党は、左派の最大公約数的主張を展開した。
小さな政府をめざす新自由主義政党=「みんなの党」の躍進が目立つだけに、左派全体として深刻な総括が必要なのではないか? 選挙制度の問題にすり替えたり、両党の組織上の欠陥をあげつらって、誤魔化すことことはできないだろう。左派の主張や展望が、説得力を失っている事実に向き合う必要がある。