[社会] 「江戸時代に戻る」覚悟を!
需要拡大も環境ビジネスも「持続可能社会」を実現しない
「資源を奪い合う弱肉強食の修羅場的な破局を回避するには、経済活動の縮小を真剣に考えざるをえない」―こう語るのは、「縮小社会研究会」を呼びかけた松久寛さん(京大工学部教授)だ。
2008年に始まった同研究会は、江戸時代程度のエネルギー消費を最終目標として覚悟した上で、そこに行き着く時間を長くし、ソフトランディングをするための議論を重ねている。松久さんに、経済活動縮小の必要性やこれまでの議論の蓄積について聞いた。(文責・編集部)
「持続型社会」のまやかし
──菅首相が「新成長戦略」を掲げているが?
松久…経済成長は、必ず環境負荷を増す。また、環境ビジネスもサービス産業も、経済の柱にはなりえない。環境問題を解決して持続可能な社会になるには、経済活動の縮小以外に道はない。
また、メディア等で叫ばれている「需要拡大論」は、「浪費拡大論」に他ならない。一時的な効果があっても、より大きな不景気の下地となるのみである。
「持続型発展のための」と銘打った技術開発や研究が、もてはやされている。しかしその可能性を考えると、資源枯渇にせよ、環境問題にせよ、その将来に悲観的にならざるをえないし、問題の先送りでしかない。はっきりと「縮小」を打ち出し、根本的な変化を促さねばならない。
──「江戸時代に戻れ」ということか?
松久…あえて「イエス」と答えなければならない事態を迎える、と危惧している。石油・石炭がなくなれば、最終的にはそれしかない。
それを覚悟した上で、いかに軟着陸するかを考えるべきだ。
──縮小社会の雇用はどうなるのか?
松久…縮小社会では、企業活動による生産量が減ることになる。これには、ドイツのように労働のタイムシェアリングなどの社会制度の転換が必要である。戦後日本の生産性は、石油エネルギーの助けを借りて10倍くらいになっている。石油をどのぐらい使うか、物をどのぐらい生産するかによるが、ワークシェアリングすれば、現在の労働時間の半分で十分だ。