[海外] ギリシャ/ギリシャとグローバル資本主義危機
──『Zマガジン』(米の月刊誌)6月号/コスタス・パナヴォタキス(ニューヨーク市立工業大学助教授)
すべての人が運営する経済的民主主義を
21世紀に入り、グローバル資本主義の矛盾が顕著に露呈していく中で、ギリシャが資本主義の最も弱い環として、警鐘を鳴らしている。ギリシャ危機は、世界資本主義自体の危機だが、よく見られる説明は、「ギリシャ労働者が不釣合いに高い給料、年金、社会保障手当てを得ているためだ」というもの。ネオリベラリストが、ヨーロッパ社会の経済的・社会的問題の原因をすべて福祉国家政策のせいとするのと同じである。
実際には、ギリシャ人の給料や年金は高くない。先進資本主義諸国では、給料・年金・諸手当がGDPの約70%を占めるのに対して、ギリシャでは約50%である。
また、ギリシャ国民は、「政府に気前の良い福祉支出を求めるくせに、その財源となる納税を渋る」という説もある。しかし、実際に納税回避するのは、経営者の方である。
彼らは、消費税の国庫納入を回避するなど、国民が支払った国税の一部を自分のポケットに入れる。だから労働者は、経営者に比べて納税率が高いのだ。そのうえ、現在のような緊縮財政策が採られると、給料凍結・低下や消費税の上昇などで、一番大きな打撃を受けることになる。
高債務国を表現する侮蔑的な頭字語PIGS(豚―ポルトガルのP、アイルランドのI、ギリシャのG、スペインのS)が表すように、上述の二つの危機説明が主流になっているので、ドイツのように豊かな北ヨーロッパの人々は、自分たちの税金が、帳簿を誤魔化してユーロ圏入りして、借金の利子すら払えなくなっているギリシャのような国を救済するために使われることに、激しい怒りを露わにしている。ドイツのメルケル首相の考え方によると、ギリシャなどPIGSが直面している危機の解決法は、「国民を甘やかさずに、国家の赤字と歳出を減らす緊縮財政を行うことだ」という。
対抗ビジョン・対抗体制を創造する時だ
こういう主流派の解釈ではなく、ギリシャ労働者や一般国民の苦しい状況は、何よりも資本主義経済システムに内在する非民主主義的性格に起因する、という理解が重要だ。経済危機に対し、緊縮財政で対応するのが間違いであることは、ギリシャ社会党政府もわかっているはずだ。
昨秋国民は、「緊縮財政こそが危機脱出の道だ」と主張する与党保守党と、「赤字財政で有効需要を作り出すケインズ主義的政策」を主張する野党との対決選挙で、後者の野党・社会党を選択した。ところが、その社会党が、「ギリシャに対する外国の信頼を回復するために、緊縮財政を採らざるを得ない」と言い出した。国民の信頼より金融市場や格付け機関の信頼の方が大切だ、というのである。
ギリシャ民衆の闘争は、08年12月暴動や現在の反緊縮財政ゼネストなどに見られるように、周期的に爆発する。ところが、この民衆の下部からの闘いを抑える要因が、2つある。