[社会] 極右グループによる「ザ・コーヴ」上映妨害 じわじわ広がる「揉め事」避ける空気
──松村 厚さん(第七藝術劇場支配人)に聞く
感じるのは「ストレス」
──妨害予告があった場合の対応は?
松村…6月19日に、在特会前関西支部長・増木重夫さんら数人が、商店街入口で抗議活動をやっています。当館にも抗議文を持ってこられたので、受け取っています。私たちは、「言論表現の自由」を根拠として上映活動をしていますから。抗議活動も表現の一つとして、禁止すべきではありません。映画の評価については、自由に議論ができる環境が整えば、私の意見は述べますが、今は、差し控えざるを得ません。
──上映妨害活動については?
我々のようなアート系映画館は、観客数が漸減傾向で、経営体力もなく、生き残る努力を必死でやっています。そんな中、今回のような抗議活動には、恐怖というより大きなストレスを感じます。商店街の皆さんへの挨拶・謝罪、警察との対応、そして何より観客を守り、できるだけ気持ちよく観ていただくための様々な配慮が必要です。これらは、通常の業務に上乗せされる作業で、我々の心身を摩滅させます。
当館は、「靖国」上映と同様、妨害予告の有無にかかわらず、粛々と上映は続けますが、中止した他館のしんどさはよくわかります。
「靖国」より早い中止決定
映画「靖国」の時は、抗議活動が始まってから中止が相次ぎましたが、今回は、街頭宣伝の予告だけで、いくつかの映画館が中止を決めたことは残念です。「揉め事を避けたい」という空気が強くなっているのかもわかりません。
ただし、上映中止館に対し「なぜ、中止したのか!」と抗議が寄せられているようですが、被害者を責めるのはお門違いです。
性犯罪被害者に対し「お前の方にもスキがあったんじゃないのか?」というような嫌がらせ電話をする輩が増えているようですが、これと似ています。
オーナーや株主の意向で中止決定された映画館現場スタッフは、それでなくても悔しい思いを抱いています。そうした苦さも共有しながら、「次は共に頑張りましょう」と励ましあいながら、私たちはやっています。(聞き手・編集部 山田)