[政治] 【意見特集】鳩山辞任・菅政権発足に思うこと 政治の混迷の中で「もう一つの世界」の実現に向けて何ができるのか?@
介護に関わる全ての人が報われる社会に●介護福祉士 遙矢当
私が菅政権の公約で一番疑問を感じるのは、介護を景気回復のための「成長産業の一つ」として捉えていることです。菅首相は、小野善康・大阪大学社会経済研究所長などをブレーンとして招き、年金を含め、社会保障政策に取り組む意欲が見られます。
介護保険制度は、スタートして10年が経ちました。結局、2007年のコムスンの問題をはじめ、介護がお金を生む産業として成り立つことが難しいことを証明した日々だったと思います。恐らく菅首相は、これまでの政権と同じく、職員と施設の不足に悩んでいるからこそ、介護の世界に活力を与えたくて、公約に掲げたのでしょう。
しかしその前に、身近な人の介護に苦しみ続ける人たちが、この国にはどれだけ多くいることか。親だから、妻だから、夫だから、家族だから─と、介護の苦しみを抱えて暮らす人々は、そのままでいいのでしょうか?
私が望むのは、介護に関わる全ての人々が報われる社会へと築き直すことです。介護の「裾野」は、とても広い世界です。介護で働く人たちだけが介護の問題に苦しんでいるのではありません。地域では、ボランティアやNGO、NPOといった無償のアクションが支えていることも、忘れてはいけません。
その中でも、「家族の介護」が原因で、社会参加から離れざるを得ない人々の問題は深刻です。菅政権は、介護に対する取り組みを見直す最後のチャンスが与えられています。
独りで暮らすことが難しく、行き場を失って入退院を繰り返す父親のために、仕事を辞めて介護施設を探し続ける男性に出会ったことがあります。また、独り暮らしを続ける父親のために、仙台から東京へ月に2回通う娘夫婦もいます。
「家族だからできる介護」があるのです。この国には、介護を仕事とする人々よりも、日常で介護に苦しんで暮らす人の数の方が圧倒的に多いのです。近頃私は、介護従事者として介護現場の整備も大事だと思いますが、こうした問題に取り組まないと、介護が社会を潰しかねないと思い始めています。