[政治] 【意見特集】鳩山辞任・菅政権発足に思うこと 私たち民衆にとって「政権交代」とは何だったのか?C
民主党政権で改革は進むのか?●兵庫県議・丸尾牧
菅体制で本当に改革は進むのでしょうか。民主党の『マニフェスト2009』では、アメリカとの自由貿易協定を結ぶと共に、WTO交渉の妥結に向け、貿易や投資の自由化を促進する、としており、グローバリズムの流れを進めはしても、流れを変えることにはならないでしょう。
併せて、民主党政権は、アメリカとの外交的な関係を強化していく方向であり、日米安保や米軍基地の将来のあり方について、深く言及することはありませんでした。
また、温室効果ガスの削減問題については、2020年までに1990年比25%削減、2050年までに60%削減すると、自公政権よりも大きく前に踏み出しましたが、その内実は、原発の依存度を大きく高める方向であり、非常に危うい選択をしています。
環境問題を本当に解決する意思があるのであれば、国内対策としては、環境負荷の高いものほど値段が高くなる環境税創設が必要ですが、輸入品にも環境負荷に応じた関税をかけるなど、グローバリズムの流れを止め、環境問題の解決の道筋が見えるしかけを作る必要があります。
ダム問題は、民主党は「コンクリートから人へ」という理念の下で、できるだけダムに頼らない治水を進めていくと表明しましたが、あきらかに不要だと考えられる道府県が設置主体の補助ダムの設置を認めるなど、ここでも迷走ぶりを発揮しています。
8月頃に国交省有識者会議で作られる新たな治水基準を基に、計画中の補助ダムの検証も始まりますが、有識者会議では、その検証主体を、ダム建設を進めてきた道府県に任せるという判断をしています。それでは、計画中の補助ダムは、必要性の有無にかかわらず、ほとんどが建設されてしまうのではないかと、危惧されます。
このような課題について、菅首相が大きく軌道修正できるとは思えませんが、一方で、菅首相は、「公共事業ではなく、医療、介護、子育て支援などに力を入れることが、雇用を確保し、成長をもたらす」と言及し、期待ができる面もありそうです。
当面、良いところは褒め、悪いところは厳しく叱るという原則に照らしながら、よりよい政策選択をさせていく必要があるのでしょう。
なお、「環境問題を最優先に考え、持続可能な社会を住民と共に築くことができる」魅力のある新党が出てこないのは残念です。