[政治] 【意見特集】鳩山辞任・菅政権発足に思うこと 私たち民衆にとって「政権交代」とは何だったのか?B
私たちの理念に沿った政策実現への突き上げを●兵庫県議・稲村和美
民主党は、さまざまな政治信条の議員が入り乱れる寄り合い所帯だ。おおざっぱなイメージで分類すると、小沢系、組合系、新自由主義系、市民活動系。今回の新体制樹立は、市民活動系と新自由主義系が手を組んで、自民党的利権体質を引きずる小沢系を追いやったとも見える。
多くの有権者が新体制を好感しているように、私も、長年の自民党体制からようやく政権交代を果たした流れを推し進める上では、基本的に評価してよい流れだと思っている。もちろん、迷走した沖縄問題や骨抜きの温暖化対策基本法などについて、転換や進展が期待できるわけではない。
菅首相は増税にも言及し、福祉・医療への財政投入や社会保障の充実を掲げたが、財政再建を進める中で、政権全体が新自由主義路線に引っ張られる可能性もある。有権者の支持は同時に、小泉劇場の時と同様、ある種の痛快感を伴って、橋下知事や河村市長といった新自由主義路線に対しても向けられているからだ。
例えば「公務員改革」。これを一丁目一番地に掲げる「みんなの党」が一定の支持を集めたように、市民の公務員に対する不信は根深い。かたや民主党は、「新しい公共円卓会議」を立ち上げ、NPOやソーシャルビジネスを新しい公共の担い手として位置づけ、その基盤整備のための制度改革を議論している。
私も期待を込めて注目しているが、自治体における単純な公務員の数減らし、入札による公共サービスの民営化が、官製ワーキングプアの増加と市民セクターの下請け化をもたらしたような危険性もある。「官が民を下請けにする」のではなく、主権者である市民が官を、税金の使い方をコントロールするという本来の公共のあり方を取り戻すためには、公務員の待遇だけでなく、その職務のあり方を、そして情報公開、地方自治法の抜本改正や寄付税制の充実など、市民主権と市民社会を強くする制度改革を、セットで行わなければならない。議論の行方は、まだ予断を許さない状況だ。
民主党は自民党に比べると、市民活動やNGOの意見や提言を取り入れる姿勢を見せてはいる。しかし、選挙向けの「つまみ食い」的な取り上げ方に終始しており、目指すべきゴールや、その実現に向けての強固な信念の共有にはいたっていない。
過大な期待はできないものの、せっかく市民活動系の首相が誕生したのだから、市民活動とのゴールの共有、徹底的な政策議論を期待したい。民主党内での市民活動系の政治基盤は弱い。風頼みではない選挙をする小沢系が理由なく力を持っていたわけではなく、新自由主義系は依然として強力なライバルだ。
私はオールタナティブな新しい政治的選択肢を登場させたいと活動しているが、一方で、せっかく政権交代を果たした民主党政権に対しても、より私たちの理念に沿った政策を実現させるための運動的突き上げや政治的影響力を強めることが必要だと思っている。自分たち自身の力量も問われている、と受け止めている。