[社会] 一ヵ月で露呈した高速増殖炉「もんじゅ」の欠陥
──たんぽぽ舎/山崎久隆
鳴りっ放しの警報装置
読売新聞は6月6日、「もんじゅ運転再開1ヵ月、警報頻発・運用見直し」という記事で、再起動から一ヵ月たつ「もんじゅ」の現状を報じている。引用しながら紹介する。
まず「各種の警報装置は頻繁に作動しており、機構は緊急性や重要度がかなり低い警報は鳴らないようにするなど、警報の運用体制を見直している」という実態に、呆れるほかない。
警報である以上、安全に関係のないものは存在しない。頻発するから止めて良いのなら、警報に値しない。
「機構によると、警報の作動件数は6月2日までで560件以上。作業に伴ってあらかじめ作動がわかっていたり、天候のわずかな変化でも鳴ったりするなど、大半は緊急性がなかった」と報じる。数の多さもさることながら、天候のわずかな影響だけで鳴り出す警報などあるのだろうか。その一例が次の記事だ。
「中でも、核燃料一時貯蔵施設内を満たす窒素ガスの圧力監視装置は、施設外の大気圧との圧力差が大きくなると警報が鳴り、5月23日には低気圧の影響で222回も作動。(中略)運転員は、警報が鳴るたびに確認作業を行うため、警報が頻発すると負担が増す」―これでは警報の意味をなしていない。確認作業をする職員も「またか」の意識しかないので、大気圧とは関係なく漏洩が起きていたとしても、簡単に見過ごすだろう。200回以上の警報の中で、本当に危険な事態が起きていて警報が出たとしても、気がつく可能性はほとんどないだろう。
これなどは、ずさんな設定の警報が、却って安全性を低下させている例と言える。建設以来こんな状態であることに、二重に驚く。誰も指摘さえしなかったのか。
さらに、この事態への対処法にも驚く。「圧力監視装置は、施設内への空気流入を防ぐために、窒素ガスの圧力を大気圧より高く保つのが目的。ただし、同施設には警報機能を持つ酸素濃度計も取り付けられており、酸素の検知で空気流入を監視できることから、機構は圧力の警報を『不要』と判断し、5月28日から使用を停止している」―これでは多重監視の意味がない。あるべき警報を止めてしまってよしとする機構の姿勢には、驚くばかりだ。この辺の事情を率直に語るのが室長だ。記事を引用する。
「もんじゅ運営管理室の瀬戸口啓一室長は、「運転停止中は、運転員も単に『よく鳴る警報』という程度の認識だった。だが、警報は本来、異常を知らせるものであり、運転状態となったもんじゅでは、安全上不可欠な警報と必ずしもそうでないもの、あるいは無駄だったものを識別していかなければならない…」
原子炉起動前に精査しておくべきものを、試運転開始後にやっているのだ。車検も通っていない車を公道上で走らせて、検査しているのである。車ならテストコースで大破しても、住民の犠牲や環境破壊は起こらない。しかし原発、まして高速炉ではそうはいかない。
こんな事態に対する言い訳が、記事の締めくくりだ。「福井大国際原子力工学研究所の竹田敏一所長(原子炉工学)は、『高速増殖炉を安全に運転する上でどのような警報が必要なのかを調べるのも、もんじゅの重要な役割だ』と指摘する」―率直な感想として、原子炉起動前にできないことなのか。もしそうなら、運転中もそのような調査をしてはならないのだ。強行するのであればそれは、実機を使った実験に他ならないのである。