[社会] どう見る? 混迷の世界経済 ギリシャ危機にみる“カジノ経済”の復活
──京都大学名誉教授/本山 美彦
日本も狙われる?
ギリシャの次は、日本ではないのか? こんな脅しを伴って財政赤字問題が、焦点化している。しかし、危機を作りだした連中の責任を問うことなく、共同責任を強いられることは御免だ。俺たちに責任はない!
「金融権力」の著者・本山美彦教授は、金融危機を生み出した投資家・銀行家たちは、大量の公的資金を受け取って息を吹き返し、「病根は肥大化している」と指摘する。今後の展開も聞いた。(文責・編集部)
ウォール街の守護神=オバマ
世界経済を語るうえで、くり返し指摘しなければならないことは、@金融危機を招いた病根は、さらに成長し大きくなっているということ。さらに、多くの人が忘れているのは、A金融恐慌の数年後に実物経済の本格的破綻が訪れた、という歴史的事実です。
まず、大恐慌の歴史を振り返ってみましょう。1929年に株価の大暴落が起こり、1933年に本格的な実物経済の崩壊に至ります。この手痛い失敗の反省から作られたのが、「グラス・スティーガル法」です。金融秩序を保つための同法の根幹は、証券・保険・銀行の兼業禁止でした。
1980年代から進められた「金融の規制緩和」とは、同法のなし崩し的解体で、1999年に同法は廃止されました。これを進めたのがR・ルービン前財務長官で、3大業務を統合した最初の金融機関がシティ・グループです。R・ルービンは、米財務長官を辞任後、シティ・グループに膨大な公的資金を投入して救済し、シティグループの会長にも就任しました。
一方、オバマ大統領は、R・ルービンに見込まれて大統領候補となった人物です。このため、金融の規制緩和を進め、世界経済を賭博場に変えた連中が、そのままオバマ政権に引き継がれました。オバマ政権が、金融機関救済のために膨大な公的資金を投入したのは、ご存じのとおりです。リーマンショック以前より多くの資金が、市場に溢れています。この膨大な資金の動きを規制する措置を講じることなく資金が投入されたので、病根は遥かに肥大化しています。
オバマ大統領は、ウォール街の力を背景に大統領となり、金融危機の病根にメスを入れるどころか、ウォール街の解体を身を挺して防ぎ、資金を提供し続けているのです。
金融商品とギリシャ危機
金融界最大の病根は、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という金融商品でしょう。これは、定期的に金銭を支払って、政府や企業の債務リスクの補償を購入する取引です。例えば、GMの社債をもつ投資家が、破綻に備えてAIG(保険会社)に定期的に掛け金を支払い、破綻した場合は、元本の一定割合を保険料として受け取るという仕組みです。
GMが破綻しないかぎり、AIGは掛け金を受け取り続けられるため、AIGは、これを証券化して売りさばきました。いわば「保険の権利」を売りまくったのです。
このCDSは、危機が進行すればするほど値上がりする証券で、これが跳梁跋扈しています。リーマンショックの時点で60兆ドルあったと言われています。金融恐慌でブームは去りましたが、それでも20兆ドルあると見積もられています。