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更新日:2010/07/01(木)

[社会] 利用者を優先すべき介護施設運営

スタッフたちのリストラへの怒り

「やっぱり私、今度の会社には移籍しません」(*@)。介護スタッフが悩んだ末に私の元へ次々と報告に訪れる。それは私が、苦労を重ねて作り上げてきた介護スタッフの結束が、音を立てて崩れていく姿だった。5月を迎えて、事業譲渡を控えた私の介護施設は、スタッフが皆今までに感じたことがない不安を覚えた。いくら待遇の悪い職場が多い介護業界とはいえ、今回のように今まで勤めていた会社から見放される事態は、誰もが経験したことのない不安だった。「リストラ」の言葉が重くのしかかる。事業譲渡先の会社は介護スタッフの窮地に漬け込んで、どさくさの間に劣悪な雇用条件を押しつけてきたのだ。スタッフは皆「裏切られた。生活を奪われる」と私に不満をぶちまけた。

ようやく介護労働の劣悪な雇用条件が社会的に問題視されるようになったのに、私は何だか時計の針が元に戻っていくような感覚を覚えた。

最初、3月の時点で譲渡先の人事担当が作成した文書には「皆様の希望を十分にお聞きした上で、不利益が生じないよう配慮させて頂く」と書いてあった。介護しか知らないある純真なスタッフ達はこの言葉を信じた。しかし、譲渡先の人事が示した雇用条件は、経歴が10年を超えるスタッフも、1年にも満たない20歳のスタッフも皆同じ条件で、これまでの収入を大きく減額するものだった。差額の大きいスタッフで年収60万円ほどにもなる。もちろん今話題の「介護処遇改善交付金」(*A)も採用していない。介護スタッフの低賃金を思えばあまりに大きな低下だ。
このためスタッフは、「それなら、自分でもっと評価の良い介護現場に移りたい」と行動を起こしたのだ。事業譲渡で社員の体制が崩れる事態は、失敗と言ってよい。私は、本来採用辞退を食い止める立場だが、私自身も譲渡先から排除された身だったので、「希望を持って新しい会社で頑張ろう」とはとても言えなかった。私が良いと思える会社でもないからだ。私は上層部から叱責を受けたが無視した。

人事担当は私よりも若く、30代に入ったばかりという男性だった。スタッフの一人が示された条件に納得がいかず彼に訴え出ると、なんと「うちの会社はスタッフが1〜2年で入れ替わる会社ですから、納得がいかないのならそれで結構です」と言い放った。彼は介護事業の人事とは思えない、傲慢な態度だ。業界全体が介護スタッフ集めに苦労している時代なのに、スタッフが辞めるなら構わないと強く出たのだ。その態度は「若造が生意気に!」と年配のスタッフの不興を買った。

※  ※

*@ 今回の事業譲渡では雇用契約は承継されない。介護スタッフは全員一旦、現在の会社を解雇となり、業譲渡先の会社に改めて入社する形になる。譲渡先は原則全員と雇用契約を結ぼうとした。

*A 2009年度中に実施された自公政権最後の介護施策。介護職員の待遇改善を目標に、各施設から都道府県への自己申告により書類審査を経て、一定の助成金を支給する。受給した助成金は介護職員に給与として支給するのみに運用できる。月給への上乗せや、賞与として支給するなど使途は様々だ。

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