[海外] イスラエル/イスラエルがガザ(パレスチナ)人道支援船団を襲撃
──談話・足立正生さん
特殊部隊、ビデオ撮影中の人権団体メンバー頭部向け発砲・射殺
イスラエルは、5月31日、ガザへの支援物資と活動家を乗せた船団を公海上で急襲。9名を殺害し、30数名を負傷させた。
核兵器を持ち、周辺国への軍事侵攻をくり返し、占領地住民の追放・抹殺を継続してきたイスラエル。同国はついに、民間人道支援団体をも軍事攻撃の標的とし始めた。これほど危険な国家への「制裁」が国連で議論される気配すらない。足立正生氏に、事件の背景やイスラエル凶暴化の理由等を聞いた。(文責・編集部)
計画的な見せしめ攻撃
イスラエル軍によるガザ人道支援船団の拿捕・襲撃事件について、イスラエル政府は、自軍兵士が襲われたために武力を行使した「正当防衛」との主張を繰り返している。
しかし、人道支援活動家の死者9名・負傷者数10名という事実に加え、イ軍に勾留された支援船団乗員からの聞き取り内容も徐々に報告され、「事件」の詳細が明らかにされつつある。そうした情報の中から、事実を抜き出してみる。
支援船団は、医薬品、乳児食、建材等の支援物資約1万dと活動家ら約700人を乗せ、5月31日午前にガザ沿岸の封鎖海域に達する予定だった。
イスラエル海軍の高速艇は、31日午前4時頃、公海上を航行中のマビマルマラ号に接近。軍艦で船団の進路を妨げるなどの作戦をとらず、また、警告も指示も行なわずに襲撃を開始した。
船団乗員が、甲板に上がってこようとする兵士に水が入ったペットボトルを投げて対抗したところ、約10分後に小銃で武装した特殊部隊がヘリコプターから、闇に乗じて船に降下した。
イスラエル部隊は、強行突入の様子をビデオ撮影していたトルコの人権団体のメンバーの頭部に向けて発砲。弾丸は貫通し、即死した。
この事件でイスラエル政府は、船団の船に乗っていた約600人を拘束し、同国内の拘置施設に収容、身体的・精神的拷問を含む尋問を行った。その後、国際的な批判の高まりを受けて、6月2日、一部を除き外国籍の乗員を出国させた。現地の活動家4人は釈放されていない。
トルコのエルドアン首相は、「イスラエルによる攻撃が、いかなる理由によるものであるにせよ、国際法に完全に反する国家テロである」と述べ、国連安全保障会議での緊急会議の開催を要求。国連人権理事会は、6月2日、人道上の国際法違反がなかったかを検証する、「独立した国際調査団」の派遣することを盛り込んだ決議を採択した。
また5日には、この船団から遅れていたアイルランド船籍のレイチェル・コリー号(船名は、イスラエル軍のブルドーザーにひき殺された米国人学生のもの)が再び公海上で拿捕された。イスラエルは、「乗員は即刻送還し、物資はガザに自分たちが届ける」と発表したが、以前も今回も送られていない。
このイスラエルの人権団体に対する凶暴な仕打ちに対して、国際的な非難の声が上がり、各地でのデモや、更に支援物資を送る船団の準備が続けられている。