[社会] 「反戦」抜きには語れない基地撤去問題
沖縄若手アクティビスト(活動家)座談会
県民大会を翌日に控えた4月24日、反基地運動にかかわる沖縄の若者の声を聞きたい、という趣旨で若手のアクティビスト(活動家)3人に集まってもらった。
政権交代によって、普天間基地撤去問題が政局化する中、沖縄の若い世代は何を感じているのか? また、沖縄での反基地運動はどう広がっているか?
思いのほどを語ってもらった。(編集部)
普天間問題の可視化
──昨年の政権交代後、普天間移設が焦点化したように思います。沖縄、あるいは皆さんから見て、この1年は、どんな変化があったでしょうか?
大城…変化といえば、やっぱり沖縄の基地問題が本土メディアでも取り上げられるようになったことです。内容はともかく、報道の量が激増して、ここまで変わるのか!とビックリしました。これは良かったと思います。
土井…「本土」のマスコミは、これまで沖国大への米軍ヘリ墜落事件ぐらいしか取り上げなかった。今では、基地問題が、連日報道されるようになりましたね。
森岡…私は、政権交代で感慨に浸ったわけではありません。でも、「これで辺野古新基地建設は消えるかな?」と期待はしました。今の鳩山政権の有り様には、がっかりさせられています。
土井…僕は、「県外移設」は民主党による沖縄向けのリッ プサービスのように感じます。
森岡…公約したら、責任があるのにね。いったん口にした以上は、実行する責任があり ます。
土井…「移設」を言う時には、やはり反戦の立場がないと意味がないと思うんです。「北マリアナが基地を誘致してくれたから」と、それに乗っかるのは、分断に乗ってしまうことであって、完全に間違っていると思います。
「移設」が抱える問題
──本土から見ると、現在の沖縄は自民党から共産党まで、一枚岩のように見えますが…。
土井…反戦運動の側が主張を譲歩して、広げているように思えます。2006年県民大会のスローガンは、「辺野古への基地建設反対」ではなく、「辺野古沿岸案反対」でした。これは自民・公明への配慮でしょう。回を重ねるごとに右にズレています。
一枚岩と言っても、議論し、何かを乗り越えて作り上げた団結とは違う気がします。
大城…県民大会では、「日米両政府にイエローカード(警告)を!」との趣旨で、統一カラーが黄色になりました。私は、どうしてレッドカード(退場)じゃないの?って思いましたけれど。
土井…もう1回大丈夫なのか、って勘ぐってしまう。
大城…自民党も公明党も、これまで沖縄の基地を積極的に推進してきたのに、「いまの『反対』は、何のためなんだろう?」と疑問に思います。
──普天間の移設先候補とし て、徳之島やグアムなどの名前が上がりました。その徳之島では、1万5000人が参加した基地移設反対集会が2度も行われました。こんな情況をどう思いますか?
土井…与党・社民党の照屋寛徳さんが、北マリアナ連邦に視察に行き、国外移設を政府に要求しましたね。でも、これまで「辺野古移設No!」とやってきたのに、反戦の視点がないと言わざるを得ません。
大城…「地元住民がOKなら、グアム移転がベスト」という声もあります。グアムへの基地移転のしわ寄せが、チャモロ族など社会的弱者のところにいくことは、明らかです。沖縄の反基地運動は、グアムの反基地運動とのつながりもあるはずです。沖縄の側から「移転先は○○へ」と言うことは、良くない構図だと思います。
森岡…「地元の了解」といっても、それは首長だったり、土地の有力者だったりします。辺野古だって、「基地賛成」派の前市長の時は、それだけを理由に「地元の了解」は取った、とごり押しされてしまいましたし。同じ理屈で、北マリアナにしても、グアムにしても、基地が来た時に犠牲を押し付けられる人々の意見はどうかを、常に問う必要があると思います。
土井…たとえ全員が基地受け入れに賛成していたとしても、基地に反対する理由は十 分にあるはずです。沖縄戦の教訓は「軍隊は住民を守らない」ということなのですから。基地は移設ではなく、やっぱりなくすしかありません。ですから、「米軍はアメリカに帰れ」という主張も違うと思うんです。
かつて全軍労(全沖縄軍労働組合)は、ベトナム反戦と基地撤去の運動を結びつけて いました。それに、2003年のイラク戦争時にも、沖縄の反基地運動はイラク現地との交流を持っていたんです。今はそういう反戦の視点がないんです。
大城…基地の存在は、どこかに戦争を作り出すということですからね。
森岡…沖縄タイムスに「日米同盟は必要」「海兵隊は抑止 力」との投稿がありましたが、「本当にそうなの?」と問題にしていく必要を感じています。
土井…そもそも、米軍基地問題は、日本国内で完結した問題ではありません日本も含めて、米国を中心とする軍事支配体制を批判しないと意味がない、と思います。