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更新日:2010/05/03(月)

[コラム] 津田光太郎/アメリカの2010年度国防報告書(QDR)について

オバマ政権が掲げる「核兵器のない世界」とは

この2月1日、4年ごとに議会への報告を義務付けられた米国防部の国防政策に関する報告書(QDR)が刊行・発表された。米国防部のQDRと呼ばれるこの報告書の提出は、今回で4回目を数え、国家安保関連ではオバマ民主党政権初の公式報告書となった。

報告説明を行ったロバート・ゲイツ国防相は、「我々は、最初、我々が計画した通りに戦争をしたことがほとんどないという苦しい経験を通じて、多くを学んだ」とし、「すでに国家安保をどう構築するか、考え直す時になった」と、新政権の安全保障・国防政策の新局面を強調したが、その内容はどうひいき目に見ても歯切れのよいものではない。というのも、この日同時に発表される予定だったオバマ政権下で米の核戦略の基本文書=「核態勢見直し(NuclearPosture Review)」報告書の策定が難航し、先送りになってしまったからだ。

オバマ政権下の安全保障・国防政策の半分しか書かれていないことを承知の上で、今回のQDRの内容を見るなら、この報告書は「アメリカが今戦争中である」という認識から出発することを強調し、この進行中の、つまりアフガニスタンとイラクで進行中の「戦争に勝利するという目標」こそ、「米国防政策の最優先目標」だと宣言することが、まず第一。

さらに、特定の国を名指ししているわけではないが、「特に大量破壊武器を保有した国家が不安定状況に陥る場合」「大量破壊武器製造用の物質と技術の、国家でない行為者(non-state actor)も含めての急速な拡散が惹起され……これはアメリカやその他の国家の安保に直接的な危害になり得る」との分析から、この不安定な安保状況に対処するため「米国は他国とは比較できない強大な軍事力を維持し、遠い地域で長期的かつ大規模な戦争を遂行できる唯一の国として残ることを、全世界に向けて約束する」というのが、第二。骨格はこの2点につきるだろう。

確かに「核態勢見直し(NPR)報告書」を欠いた国防報告は、いかにも歯切れの悪いものだが、そのことをもって「『核兵器のない世界』をめざすオバマ大統領」=ホワイトハウスと米国防総省との調整がつかないため方針が定まらないのだと報じられることについては、果たしてそうなのだろうか。

国防総省とのこの間の調整の中で、当初予定されていた核兵器「先制不使用」の宣言が見送りの方向だということからすれば、その側面もあるのだろう。しかし、そもそもオバマ米大統領の「核兵器のない世界」とは、平和運動がこれまで言ってきた「核兵器のない世界」とは、違うものなのだ。だから駄目だと言うつもりはないが……。

冷戦時代、核兵器は国家が管理するものだった。今はそうではない。国家による管理は不安定になり、技術は拡散し、核兵器は「素人が使える殺戮手段」になってしまった。それが野放し状態になるのは恐ろしいことだ──という認識こそオバマ政権が「核兵器のない世界」を望む理由なのであって、ホワイトハウスも米国防総省もそこに意見の相違はない。むしろ、そのプロセスの具体化のツメを緻密に計画しているというのが実態に近いと思われる。

米政府の広報が「従来のNPRの枠を超え、今回は核不拡散や核安全保障にまで触れる広範な内容になる。通常兵器による抑止能力を拡大する方針を示すことになるだろう」と、今回のNPRの意義を強調するのも頷ける。計画には退役予定の核弾頭を含め、ドイツ、イタリア、ベルギー、トルコ、オランダに配備しているとされる戦術核の削減も盛り込まれるようだが、代わりに素人の核の脅威に対抗するため「米国は他国とは比較できない強大な軍事力を維持」しなければならず、「無人爆撃機などの空軍力をさらに強化」していくと続けられるなら、それは駄目だと言うしかない。

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