[社会] 原発=温暖化対策のウソ 活況呈する原発ビジネス
エネルギー浪費経済の転換こそ必要
2009年11月、マイクロソフト社創始者=ビル・ゲイツが、東芝の「磯子エンジニアリングセンター」を訪問した。ただし、訪問の目的はパソコンではない。同センターの使命は原発開発だ。ゲイツ氏は、原子炉開発のベンチャー企業=米テラパワー社の幹部ら3人と共に、東芝が開発する小型原子炉「4S」について説明を受け、最新の試験設備などを見て回ったという。
地球温暖化対策を口実に、原発復活の動きが加速している。MS社を引退したビル・ゲイツが、次に手がけるのが原発開発というわけだ。
テラパワー社が開発しているのは、TWRと呼ぶ原子炉。一般の原発では使えない低品位劣化ウランを燃料とし、一度稼働すると補給なしで最長100年間の長寿命運転が可能とされる次世代原子炉だ。ゲイツは、資金面からテラパワーを支えるオーナーの立場にある。
一方東芝は、06年に米原発大手ウエスチングハウス(WH)を買収し、半導体と並ぶ事業の柱として原発を位置づける。
チェルノブイリ事故で新規建設が止まり、過去の技術となった原発だが、原油の高騰で復活し、温暖化対策で弾みがついた格好だ。目敏い資本家は、温暖化ビジネスに次々参入している。原発ビジネスの今を概観する。(編集部・山田)
寡占化進む原子炉プラント市場
ゲイツは、東芝訪問に先立って中国にも立ち寄った。原発開発会社の国家核電技術公司と、技術協力の覚書も交わしたという。ゲイツをつなぎ役として、日米中にまたがる次世代原子炉プロジェクトにつながる公算も囁かれる。
世界の原子炉プラント市場は、合従連衡で寡占化が進み、現在4つの企業連合体に集約している。@アレヴァ(仏)―ジーメンス(独)―三菱重工、A東芝―ウエスティングハウス(米)、BGE(米)―日立、Cアトムエネルゴプロム(露)だ。
日本企業は、重要な一画を形成する。特に東芝は、自社で手がける沸騰水型軽水炉(BWR)とともに、ウェスティング・ハウス社の加圧水型軽水炉(PWR)も手に入れ、2方式の軽水炉を持つ唯一の原発メーカーになった。