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更新日:2010/04/26(月)

[社会] 政治警察化する検察
──三井 環氏(元大阪高等検察庁公安部長)インタビュー

恣意的逮捕・冤罪・裏金作り・矯正協会への天下り…

検察による政治干渉が目立つ。民主党・小沢幹事長秘書逮捕をはじめ、「政治資金規制法違反」を理由とした北海道教組幹部の逮捕など、新政権への揺さぶりは、「官僚の抵抗」そのものと言える。

「『不偏不党』の伝統が破られた」と語るのは、元検事の三井環氏だ。三井氏は、検察の裏金作りを内部告発したため、口封じとして逮捕され、収賄罪などで有罪判決を受け、今年1月に満期出所した。

同氏は、検察の政治干渉について、「裏金作りのもみ消しで自民党に借りができたために、不偏不党の不文律が破られた」と主張する。受刑中から同氏は、取り調べの可視化、刑務所改革などを柱とする司法制度改革も提案している。受刑者として刑務所を経験したことで、「更正施設として刑務所は全く機能していない」ことを実感。検察の天下り先としての矯正協会の利権構造も告発する。三井氏との1問1答を紹介する。(文責・編集部)

検察裏金疑惑で自民党に「借り」

編集部(以下・編)…検察の政治的捜査が目につくが…。

三井…検察は自民党に「借り」があるからだ。2001年、原田検事総長(当時)が森山法相と共に「裏金作りは事実無根」と記者会見して以降、隠したい裏金作りが検察の弱みとなっている。小泉政権が疑惑もみ消しに協力し、以降、自民党は、検察の捜査に影響を与えてきた。

安倍政権は、自らの北朝鮮政策に反して朝鮮総連に協力した元公安調査庁長官・緒方重威を、詐欺罪で逮捕・起訴させた。これは緒方氏自身が語っているように、官邸筋が主導した逮捕・起訴だ。

麻生政権は、衆院選前に小沢代表(当時)の公設秘書を政治資金規正法違反で逮捕・起訴させた。この逮捕は、「選挙に影響を及ぼす時期に強制捜査はしない」という検察の鉄則を破ってまで実行された。支持率が10%を下回り、末期症状を呈していた麻生政権からの働きかけがなければ、あり得ない逮捕だ。

…最近の小沢周辺への捜査も、自民党の主導か?

三井…私は、陸山会(小沢幹事長の資金管理団体)の口座に振り込まれた4億円の中に、西松建設からの5000万円が含まれており、その金が土地購入資金に充てられたという証拠を、検察特捜部は掴んでいると思っていた。5000万円が公共事業受注の謝礼であれば、事件の重みが増すからだ。

さらに小沢と石川秘書らとの共謀関係についても、自供なしでも立証できる客観的な証拠を掴んでいると思っていた。通常の捜査なら、これなしに政権中枢にいる政治家秘書の逮捕はできないからだ。

ところが石川氏の起訴だけで、「小沢は嫌疑不十分処分」とした。特捜部は、何も証拠を掴んでいなかったのだ。これを見ても、無理を重ねた逮捕だったことがわかる。

「小沢抜きの民主党なら何とかなる」

…「不偏不党」というが、検察は所詮権力の一部。時の政治権力との癒着は、昔からあったのではないか?

三井…検察は行政権力の一部だから、時の政権との癒着は当然ある。しかしロッキード事件での田中角栄の追及など、政治腐敗の追及では、国民の負託に一定応えてきた。

ところが、検察裏金疑惑以降、自民党中枢への捜査は及び腰になった。日歯連事件がその好例だ。東京都内の料亭で橋本龍太郎(元総理)、野中広務(元自民党幹事長)、青木幹雄(参院幹事長)の3人が、日本歯科医師会会長から1億円の小切手を受け取ったという闇献金事件だ。

あの事件も、最終的に小泉首相(当時)が、松尾検事総長にストップをかけて、橋本、青木は証拠不十分で不起訴となり、野中も起訴猶予となった。松尾検事総長は、あの事件以降「経済犯の捜査」を掲げ、ホリエモンなどの経済犯追及にシフトした。本来の特捜事件を追えなくなったからだ。ホリエモンは、日歯連事件追及の代わりのスケープゴートにされた。

…現政権与党である民主党政権にすり寄らないのは何故か?

三井…検察にとって民主党政権は、危険な存在だからだ。自民党とのつき合い方はよく知っている検察だが、民主党は未知の部分が大きい。

特に「小沢は危険だ」と見られている。総選挙前に秘書を逮捕された小沢は、「検察との全面対決」を掲げ、検事総長の国会承認案件化や民間人の起用も口にしている。「無駄遣いの一掃」を掲げる民主党が、検察の裏金問題にまで着手するようなことになれば、検察が受けるダメージは極めて大きい。小沢抜きの鳩山政権なら何とかなる、と検察は思っている。

検察による小沢追及については、「米国の意向」という見方や、「官僚層全体からの逆襲」など、様々な分析が語られている。しかし、内部にいた実感からすると、「組織保持」こそが最大の動機だろう。

…「選挙に影響を与える強制捜査はしない」という原則はいつ頃からあったのか?

三井…私が任官した1972年には、既に不文律としてあった。私の現役時代も、国政選挙のみならず、地方選挙でも慎重に考慮していた。

社民党・辻元議員の逮捕も、容疑事実は数年前からわかっていたことだ。選挙前にやる必然性は全くなかった。政治的な逮捕だ。小泉政権は、あの逮捕で社民党に大打撃を与えることができた。

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