[情報] 書評/「抵抗の主体とその思想」
明確な「反資本主義」のスタンスを
本書は、著者が反グローバリズム運動について書いた文章を一冊にまとめたものである。
日本では昨年、各地で「洞爺湖サミット」反対の取り組みがおこなわれた。新自由主義・グローバリズムへの反対スローガンは、すでに運動圏内の人々に、違和感なく受け止められるようになっている。
しかし、新自由主義、あるいはグローバリズムに反対する時、私たちがその先にどんな社会を思い描いているか、となると、非常に心許ないのではないか。つまり、新自由主義でなく、グローバル化でもない資本主義ならいいのか? 私たちは「より良い資本主義」を望むのか? 資本主義って何だ?という問いかけだ。
著者は、「反資本主義のスタンスを明確にすることこそが求められる」と主張する。
私たちは昨年9月以降の「政権交代」を機に、その問題に直面している。弊紙は衆院選後の9月15日号で、「政治の流動化に実践的に介入しながら自らを再生産し、強化する社会運動への脱皮が求められている。社会運動の側にも全体性・政治性が求められる時代になった」と書いた。
著者も民主党政権について、「歴史的な教訓をふまえた時、民主党政権の下では、新自由主義の諸矛盾は資本主義内部で止揚される方向で『解決』が図られるだろうし、それ以外の選択肢はないことは明らかだ」(11ページ)と指摘している。
著者は、あとがきでこう書いている。「…本書で私は、次のような例によって私が解決したい問題の所在を示唆したつもりだ。/たったひとりの大切な人のために詩を書く詩人は、どのようにして食べていけばいいのか?/エコロジストはマクドナルドで働けるか?」「暗黙のうちに資本や市場の価値観への転向を強い、すべてを貨幣所得に還元して評価するような雇用や貧困解決は解決ではない」
「もうひとつの社会」を構想していく上で、考えるきっかけを与えてくれる本だ。(編集部 一ノ瀬)