[反貧困] 多目的カフェかぜのね 労働も経営責任も共有する
知る、感じる、つながるをテーマに
「企業に就職しなくても生きていける。そんな空気を創っていきたい」─こう語るのは、春山文枝さんだ。京都市左京区にある多目的カフェ「かぜのね」は、「知る、感じる、つながる」をテーマに、京都・出町柳駅のすぐそばの古いアパート一棟を丸ごとリフォームした。
1階奥にイベントスペース、2階にはシェアオフィス(クリエーターや市民活動の小さな事務所)が併設されている。「おいしいものを食べ、楽しい気持ちでオルタナティブな生き方や働き方を実践すれば、おのずと輪は広がる」との確信だ。市民債で広く出資を募り、運営も4人の協同経営。「労働も経営責任も共有する」という春山さんに「もう一つの働き方」としてのかぜのねを語ってもらった。(編集部 山田)
多くの人の協力が自信につながった
自分のやりたいようにやるなら一人でやれば自由でいいのですが、ワーカーズコレクティブへのこだわりもあったので、協同経営という手法を選びました。「頭でっかちだ」と批判する人もいましたが、「雇う―雇われる」という働き方へのオルタナティブを探しているわけですから、平等な立場で、責任も共有する協同経営を実践してみたいと思いました。
といっても、「対等・平等」は言うは易し…です。協同経営の4人は元々、友人や活動仲間だったので、基本的な方向性や問題意識は共有できていたと思います。しかし、いざ具体的に進み始めると、小さなところで違いや不一致が生まれてきます。
人間関係もたいへんです。企業なら上下関係を作って決定権と責任の所在をすっきりさせますが、私たちは、水平な関係を前提としています。決定と責任が集中しないように情報を共有し、コミュニケーションをとり、合意を創っていかねばなりません。ここが一番、悩ましく胃が痛くなるような葛藤の連続です。今は夜中まで話し込んだりしていますが、手探り状態です。
でもお互いの持ち味を活かし合えた時には、可能性が広がるということも実感しています。
店に時々、「バイトをさせて欲しい」という人も来ます。でも全体の運営に責任を持つ人と一緒にやりたいという気持ちから、「働きたいならば、協同経営に参加して」とお願いしています。
運営資金も、広く市民債を募集しました。メガバンクに預けたお金は、どんな使われ方をするかわかりません。私たちの目標や夢を語り、参加の一つの方法としての出資を呼びかけました。
1口5万円で、5年後から返済し始めたいということで募集したところ、50口以上集まりました。集まるかどうか不安はありましたが、実際はお金が余っている人より、ない人の方が協力してくれました。支え合って生きる感覚が、そういった人々には残っているのだろうと思います。
これだけの人が協力してくれたことで、私は、この先何があっても何とかなるんじゃないかという自信に繋がりました。